百合オタよ。推し香水を二つ作って推しカプを具現化しよう。
この世には推し香水なるサービスがある。推しのイメージを伝えると、それを表現した香水を作成してくれるのだ。
これは何も単推し向けのサービスとは限らない。当方は百合のオタクである。「これ推しじゃなくて”推しカプ”にして遊んだら面白いんじゃね!?」ということで推し香水を2つ作ってみたらその過程を含めてめちゃ楽しい体験だったのでシェアさせて欲しい。
今回、大変ありがたいことに推し香水Scentlyさんのご厚意により、モニターをさせていただくこととなった。推し香水のサービスはいくつかあるが、Scentlyさんは香水をただ作るのではなく、“推しを具現化する体験”を味わうことができる。詳しくはこの記事を読んでもらえるとわかります。
HP上からオンラインフォームに記入するだけで、推しが香りになって家に届く。値段は1本2980円。二つ買って推しカプにして遊ぶとしても、そう高くはない。ちなみに一本に二人の推し概念を込めるカップリング香水というのもできるらしい。
Scentlyさんを体験してまずビビったところ、それはなんと言ってもオーダーシートのおもてなし精神が高すぎる点だ。
オーダーシートとは、推しのイメージを伝えるための記入フォームである。ここに記載した情報を元に推しの香りが決められる。つまり、推し香水を作成するにあたり一番肝心な部分だ。
簡単にいうとオタクが推しのプレゼンを行う場である。
でも私百合のオタクじゃん。誰にも求められてないのにわざわざサーバー契約してこんなサイトなんか運営してるわけじゃん。普段から聞かれてもないのに語ってるわけじゃん。それが「参考にするから推しカプについて語ってくれ」なんて言われるわけじゃん。鼻息荒くしてオーダーシートに突撃するじゃん。
!?
性別だけで6項目ある……!?しかも人外のものに手厚い……!?
どんなキャラクターでも置いていかない優しさ。吸血鬼の百合だってイケる。
!?
誕生月……!?しかも、スラム街育ちや宇宙出身にも優しい「わからない」の選択肢まで用意してあるのか……!?
そう、オーダーシートの手厚さが尋常じゃないのだ。
迷惑そうな顔をされながら一方的にしゃべり倒すつもりで乗り込んで行ったら、ふかふかのソファが鎮座する応接間に通されニコニコのコンシェルジュが現れた、そんなサービス精神を感じる。「せっかくの推し香水作るわけだから悔いが残らないように伝えたい」、そんな気持ちにしっかりと寄り添ってくれるのだ。
↑今回私の依頼したキャラは紅茶が結構大事な要素だったため、質問内容があまりにもピンポイントすぎて驚いてしまった。そんなことまで聞いてくれるのか。ちょうど記述欄に書こうと思っていたところだったよ。
↑いよいよキャラの深掘り……の前に世界観の質問がある。背景の質問なんて一番楽しいところじゃん。ブログ書くときだって、ほっとくと書きすぎるからいつも気をつけているのに。ここは書いていて本当に楽しかった。聞かれてもいないことを色々と書いた。楽しい。999文字までいけるぞ。
↑本番。思いの丈を文字の中にミチミチに詰めてぶつける。
説明をしても良し。解釈を伝えるのも良し。ここにあなたを縛る鎖は存在しない。オーダーシートはオタクの想像力を全て肯定する。
香水を二つ作る場合、カプ相手との関係について触れるのも良いだろう。ただ、今回はカプ相手ありきの香りではなく、1人のキャラクターとして独立した香水を二つ作ることでカプを具現化させたかった。よって私が書いたオーダーシートではカプ相手について触れなかったが、こういった思想を持ち込むのも自由だ。
また、1本に2人の概念を込めるカップリング香水を作りたい場合は関係性について語ると良いだろう。
盛り上がった飲み会の帰り道のような満足感と共に送信ボタンを押して終了。
項目数は実に23。「そんなにも記入しなくちゃいけないのか!?」と思うかもしれないが、これは何も語りたがりなオタクへの配慮、というわけではない。私はそこにむしろ“語るのが苦手なオタクへの優しさ”を感じ取った。
推しに関わらず、好きなものをきちんと説明することはすごく難しい。私はこのサイトで好きなことを記事として書いているが、未だにサラサラと文章が出てくることはない。「概念の言語化は難しい」これは私がブログを始めてから今もずっと感じ続けていることだ。
「推しってどんなイメージですか?」と入力欄を一つだけ用意されて、そこにうまく言葉を落とし込める人はそう多くはないはずだ。
生まれから語った方がいいのか?いや、それより先に背景を説明するべきか?性格を表すエピソードを入れるべきか?というか香りを作るために必要な情報ってなんだ!?そして人は画面の前でフリーズする。
しかし、推しというドデカい概念が、誕生月や好きな飲み物といった質問で分解されていれば比較的簡単に答えることができる。一通りの質問に答えれば、推しの香りのイメージが出来上がりだ。
「もうちょっと説明したい!」という人はさらに詳しく語っても良い。この質問の多さは誰も置いていかない優しさの表れでもある。
↑そして届く。テンションが上がらざるを得ないでしょう。楽しみにしていた旅行の前日のように、推し香水も開封する段階からめっちゃ楽しい。
うお〜〜〜〜〜〜〜〜!
↑これは香りの解説レターといって、なんと香りを決めるにあたってオーダーシートの内容をこう読み取りましたという解釈をわざわざ手紙にして送ってくれるという狂気のブツである。本当に読んでくれたのか……あのオーダーシートを……。
入っていた香水を初めてプシュっと宙に吹きかけたとき、私は思わず拍手しそうになってしまった。
それは偉い人の講演が終わった時のような”しなければいけない拍手”ではなく、胸を打つ舞台が幕を下ろしたときに出るスタンディングオベーションのように”心から湧いて出る拍手”だった。イメージでしかなかった推しカプをこの世に形として再現してくれてありがとう、”私”の推しカプを具現化してくれてありがとう、という、感謝とリスペクトの気持ちから生まれた拍手だ。
百合には不在の百合という概念がある。
簡単にいうとキャラクター本人ではなく、何らかの痕跡から百合を感じ取るという概念だ。例えば以前訪れた『マリア様が見てる』コラボカフェでは人が入れないような奥まった場所に二人掛けのベンチが置いてあり、「二人は”今は”ここにいない」という不在の百合が表現されていた。「推しの香りによってその場に二人がいたであろう痕跡を残す」これは正に不在の百合そのものである。推し香水は百合と非常に相性が良いのだ。二つの香りが混ざり合った空間で、見えざる百合に思いを馳せる。
思うにScentlyさんの推し香水の面白さは解釈にあると思う。
一つは解釈が具現化する面白さ。バラバラで抽象的だった推しの脳内解釈が束ねられて、香水という触れるモノとして届く。嗅覚という新しい感覚で推しカプを愛でられる。机の上に並ぶ二つの香水を眺める幸せは何物にも変え難い。
もう一つは第三者による解釈の新しさ。私が解釈を込めたオーダーシートは一つ一つ精読され、香りに落とし込まれる。その際、内容をどのように解釈したのかを丁寧に香りの解説レターに記載してくれるのだがこれが新鮮で面白い。そこには、「確かにその通りだよな」という納得と「確かにそうかもしれない」という新たな発見が詰まっている。推しを今まで知らなかった角度から見ることができる。
Scentlyは推しの”具現化”だけではなく”再発見”の体験でもある。自分の解釈に対し解釈が返ってくる楽しさは実際にオーダーシートを書いた人だけが味わえる勝利の果実だ。
というわけで注文から使用までずっとワクワクしっぱなしの推し香水Scently。商品はもちろんのこと、体験として素晴らしいのでぜひ。
↓ScentlyさんのHPはこちら