愛がほしかった吸血鬼vs体は売るが愛は売らない少女【望月血液研究所の娘】

愛がほしかった吸血鬼vs体は売るが愛は売らない少女【望月血液研究所の娘】

先日、あやね先生の『望月血液研究所の娘』が発売された。

望月血液研究所の娘 (永遠草紙)

私があやね先生を知ったのは数年前で、友人からおススメされたので読んでみたら珍しく好みが一致した(この友人は特に百合好きではないため、同じ作家を好きになることはかなり珍しかった)

そのあやね先生が商業誌で百合を出すということで、二人とも発売を心待ちにし、実際そのクオリティも珠玉の出来だったのだが、あまり百合好きにシェアされていないような気がするため、今回はその魅力を紹介していきたい。そのためにこのブログがある。

 

一応R-18です。

 

あらすじ

小さな貧しい漁村で暮らす少女、がこの作品の主人公だ。一家の働き手である父は早くに死別し、母は6人兄弟の子供を養うために体を売っていた。

絹はそんな家族を少しでも支えようと、大学進学の勧めを断り、とある山奥のお屋敷へお手伝いとして働くことを決意するのだった。

お屋敷の主、美都子はある血液の難病を抱えていた。屋敷から少し離れたところにある医療研究施設『望月血液研究所』から送られてくる薬で今は何とか生きている状態だという。そんな二人の元へ、望月研究所から先生とその娘のが美都子の診察に現れる。

 

診察の間、邪魔にならないように桂の面倒を見ていた絹は不注意から指を切ってしまう。彼女の血を見て、突如桂が暴れ出す。そして絹の服を引き裂き、床へ押し倒してしまう。あまりの態度の豹変ぶりに、絹は慌てて美都子の元へ逃げ出す。

 

桂の正体は吸血鬼だった。しかも、ただ血を吸うのではなく、娘を犯した後の血を吸わないと生きることができないのだという。美都子は望月血液研究所と協力し、血液を吸わせるための娘を桂に捧げ、その代わりに病気の薬をもらうことでお互いにwin-winの関係となっていたのだ。この屋敷で働くということは、つまり桂に凌辱されることを意味していた。

手錠を付けられ、連れ戻されてしまう絹。服を脱がされ犯される嫌悪感に思わず苦悶の表情を浮かべる。

しかし、事が済めば桂から金がもらえる。絹にはどうしても家族に送るための金が必要だった。それに、別に死ぬほどの血を吸われるわけではない。故郷で自分たちのために体を売ってきた母のことを思えば耐えられない仕事ではなかった。

こうして絹はさらなるお金を稼ぐために、吸血鬼に体と血を捧げる関係を受け入れるのだった。というのがだいたいのあらすじ。

 

魂が込められた、唇の作画

この作品、商業誌だけあってえっちのシーンが大半を占めているのだが、とにかく唇と舌と唾液の描写に凄まじく力が入っている。大体初めに濃厚なベロチューを決めるためすぐに口まわりがベタベタになるのだが、それだけに収まらず顔も舐めだしたりして作者のフェチズムをムンムンに感じる。

舌で唇をめくる描写。なんかもうもの凄い。ぷるんとした唇の柔らかさまで伝わってくるような質感。魂が込められた作画だ。

 

 

愛がほしかった吸血鬼と愛を知り始めた少女

そして桂は生きるために、絹はお金のためにえっちをするわけだが、一見利害の一致に見える関係も、報われない関係へと変わる。というのも、すぐに桂は絹を好きになってしまうからだ。ビジネスライクからラブラブに、しかしこのラブラブな関係というのがまた切ない事情があるのだ。

吸血鬼は若い娘を犯して血を吸わなければ生きていけない。そして吸血鬼には吸った相手を好きになりやすいという性がある。そう、桂はいつも餌の人間を好きになってしまうのだ。

しかし、桂に襲われて血を吸われた娘は誰もが逃げ出すか快楽に狂ってしまう。好きな人とまともに関わることができない桂にとって、人間の恋人はもっとも遠い存在だ。彼女は自分が生きるために女の子を凌辱する罪悪感を抱えつつも、やっぱり自分を受け入れてくれる人が欲しいと長い間苦しんで生きてきたのだ。そこに表れたのが絹である。

吸血行為を金のためと割り切る潔さ、尚且つ自分に好意を抱かない彼女は自分の愛を思う存分ぶつけることのできる存在。相思相愛は絶対に報われないと理解している桂にとって、絹は理想の恋人役だった。

ついに現れた、好きなだけ愛してもいい相手。長年の憧れを叶えるようにべたべたに懐く桂。しかし、お金のためと割り切っていた絹も少しずつ桂のことが好きになってしまう

先が気になる気持ちとこの先の辛い展開を見たくない気持ちがせめぎ合う。一体どうなってしまうの~~~~。

お金のために吸血鬼に体を売るという割り切った関係ながら、切なく心を引くストーリー展開。お互いの気持ちが通じる程いたたまれなくなっていく。4話構成とは思えないくらいの読みごたえがある。

 

 

友人から聞いた話によるとあやね先生は前の商業本でも百合の話を描いていたらしい。しかし、男女ものの作品も混ざっていたため、百合界隈ではほとんど出回っていなかった・・・気がする。そう、この界隈は男が混ざる百合以上に、男女ものが入っている単行本については厳しいのだ。そういう本は売る側も百合としてPRすることが難しいため、自然と情報も出回りにくくなる。

しかし、今回、全編が百合である。やっと帯に百合の文字を入れてPRできるようになったわけである。百合好きにターゲットを絞ってマーケティングできるようになったわけである。

 

というわけで安心度100%でお届けされているので、気になった方はチェックしてみてください。

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