佐藤真登先生の『嘘つき戦姫、迷宮をゆく』の1巻です。
あらすじ
見栄っ張りで嘘ばかりつく貴族の令嬢リルドールは、
自分で仕掛けた決闘で敗北し、実家を追い出されてしまう。
迷宮都市で謹慎処分を受けるのだが、リルドールは挫けない。
周囲を見返すため、冒険者としての成り上がりを決意し、
街で出会った少女コロネルとともに迷宮へ挑む。
温室育ちのリルドールは自分よりも才能のあるコロネルに嫉妬し、
現実に打ちのめされ挫けそうになるも、
自分が持っている、とある「武器」に気がつく。
艶めく髪は女の命、ドリルロールは美の結晶。
女の誇りが詰まったこの髪に、貫けぬものなどありはしない。
見栄と強がりしかなかった少女が
自分の嘘を真実へと変える覚悟を決めたとき、
縦ロールは最強の武器として変化し、無敵の輝きを放つ。
これは、ただの小娘だった少女が
英雄になるまでの熱血冒険ストーリー。
ええやん。 絶対面白いじゃんこんなの。 いや、絶対面白いやつじゃん。
最近あんまり熱血モノ読んでないなと思い、気になったので買って見ました。
あらすじからもうビシバシ熱さが伝わってきて、まだ読んでないけどアマゾンで星5のレビューをつけたくなります。
弱いんだよなー、こういう熱い物語。
バディもの?なのかな?二人の女の子が出てくるということはうっすらわかりますが、どこまで百合が進むのかは不明。
いや、まぁいい。 今回は熱血目的なので。
百合+熱血ではなく熱血+百合くらいにしか思ってないので、まぁ百合ももしあったらいいなくらいですね。
サービスで出てくる食後のデザート的な。
以下感想
「わたくしを、誰と心得ていますの!」
「わたくしは、このクオール芸術都市を支える支柱の一家、アーカイブ家の息女っ。リルドール・アーカイブですわ!」
テンプレみたいな調子こいたお嬢様のセリフ。
異世界転生もので一番最初に主人公に喧嘩売って見事にカマセになるやつだな~とか思ってたら、ホントにそんな感じの展開になってて笑ったw
喧嘩を売った相手は学園に転入してきた特級冒険者。
大陸で最大のクランのマスターであり、最強と囁かれる少女だ。 もう絶対勝ち目ない。
「許しませんわ! このわたくしを敵に回したことを後悔なさいっ。 あなたにはこのわたくしが誰なのかを、思い知らせてくれますわ!」
次々と飛び出るお嬢様系カマセのテンプレート通りのセリフ。
よくそんな教科書通りのセリフがスラスラと・・・。
普段なら、あーいかにもカマセなやつが出てきたなぁとしか思いませんが、何を隠そう主人公はこの性格悪いカマセお嬢様なので新鮮な気分。
あろうことか最強の冒険者に喧嘩を売ったお嬢様、相手に鋭い皮肉を言われ引くに引けなくなり、襲いかかるも秒で返り討ちに。
自分でガッチリ立てたフラグを覆すことなく、自ら綺麗に回収していきました。
家の名を汚したことによって、ついに実家から見捨てられたリルドールは謹慎となり、住んでいた芸術都市を追われ迷宮都市であるフォーラビンでアパート経営を命じられる。
この辺でね、主人公であるリルドールの人となりがわかってくるんだけど、これがなかなか救いようのないクズなのねw
すぐ他人を見下し、家の名を背に威張り散らし我儘言い放題、プライドだけは誰よりも高く、ビッグマウス、都合が悪くなるとすぐ言い訳で自分を守る。
自尊心と自意識が高いせいで一度言い出したら引くに引けなくなってしまう事態に陥ることもしばしば。
どうしようもなさすぎて擁護できないレベル。
付け加えると本人のスペックはあまり高くなく、戦いの才能も一切なし。
ただ顔とスタイルはよい。
そんなろくでなしが大人しくアパート経営をするわけもなく、迷宮都市に着いて早々職務を放棄。
何を言い出すかと思えば冒険者になると言ってのけます。
同伴しているメイドに本気で同情します。
クズもここまでくると清々しいですね。
今のところリルドールのいいところが顔くらいしかないけど大丈夫かw
自意識過剰でプライドの高いビッグマウス。 これがこの話の主人公なのです。
ギルドの前で出会ったのは冒険家初心者であるコロ。
物怖じしてなかなかギルドに入れないコロに、後ろについてきなさいと言い放つとリルドールは堂々とギルドに入ってみせる。
こういった行動ができたのも人の前で見栄を張りたがるプライドの高さとギルドに対する無知のせいでわけですが、こういうところはまぁ素直にかっこいいなぁと思った。
肝が据わってるとはまた別のよさというか。
ちなみにこの世界、ゲームシステムのような世界観があり、レベルの概念、迷宮で敵を倒すと経験値と素材のドロップ、ボス戦などRPGのようなシステムがあります。
よって迷宮を探索して一獲千金を夢見る冒険者がこの世界にはたくさんいるのです。
仮想世界でなく、現実世界でこのようなゲームのようなシステムが出てくるのはなんだか違和感を覚えますが、なろう系だとこういうの多そうですね。
その後、コロはリルドールを姉貴分と慕ってアパートに転がりこみ、何度か一緒に迷宮を探検することとなる。
コロは戦闘に関して天賦の才能とも言える類稀なるセンスを持っていた。
既に実力はコロの方が上、レベルこそリルドールの方が高いものの追い越されるのも時間の問題であった。
コロと一緒に戦うたびに心に嫌な感情が湧いてしまうリルドール。
コロから純粋な羨望の眼差しを受け、さらなる虚勢を張ってしまうリルドールがとても痛々しい。
初めて?自分を心から慕ってくれる妹分が出来たのにこれじゃあ居心地悪いに決まってますよね。
ある日、いつも通り迷宮で狩りをしていたリルドールとコロの元へ二人の刺客が現れる。
リルドールの父親から、彼女が冒険者にならないために痛めつけてくれと依頼を受けた彼らは探検を生業とした生粋の冒険者である。
当然その実力も折り紙付きで、特に男の方のレベルは25、15レベルだが戦闘はズブのリルドール、センスはあるもののレベルは6のコロにはどうしても覆せない実力差であった。
天賦の才能を持って刺客の片方となんとか張り合うコロだったが最終的にボコボコにされてしまう。
一方のリルドールはというとそもそも相手にならずボコボコにすらしてもらえないという有様。
相手の過酷な言葉によって自らの弱さをさらけ出されたリルドールは、完全に心が折られ、もはや立ち上がることすら不可能だった。
勝負もつき、相手が撤収を考えたそのとき、ボロ雑巾のように倒れていたコロが立ち上がる。
「違いませんっ。 あの人は、人の前に立てる人ですっ。 迷っている人を先導してくれる人ですっ。 知らないことを優しく教えてくれる人ですっ。 持たない人に分け与えられる人ですっ。 そうしてわたしに誇りを見せてくれた、わたしの憧れの人なんです!」
リルドールへの侮辱に血塗れのまま何度でも言い返すコロ。
その胸にあるのはリルドールへの憧れ。
しかし既に限界を超えていたコロはなすすべもなく倒されてしまう。
コロの魂の叫びを聞いて、立ち上がったものが一人。 リルドールだ。
熱い! 熱すぎる!
「なら聞いてやろうじゃねぇかっ。 お前は誰だあッ、名乗ってみせろ!」
「わたくしは、リルドール!」
「艶めく髪は女の命、ドリルロールは美の結晶っ。 誇りの詰まったこの髪は、すべてを巻き込み貫き通す!」
吼える!吼える!吼える!
心を折られ、自らの弱さを見せつけられ膝を突き地に落ちたリルドールが立ち上がり吼える!
そうだ、確かにリルドールは戦いの才能は皆無で頭もめっちゃいいってわけでもなく性格は最悪だし、おまけに友達もおらん!!
だけど! ああ確かに! 確かにそのプライドとビッグマウスはどの誰よりもデカかったはず!!
リルドールの見栄っ張りを、虚勢を、コロは憧れと言った! その思いはコロの魔法の輝きとなってリルドールの心の闇を消し去った。
そしてその思いに応えるためにリルドールは虚勢を吼える!!
ついにリルドールの魔法が発現。
誇りであるその五つの縦ロールをドリルへと変化させる。
そのまま使うのか! 帯に「縦ロールを武器に」って書いてあって?ってなったけどまさかそのままの意味とは・・・。
しかし自らの誇りをそのまま武器を変えて敵を打ち砕くのはとても胸が空く。
「あの子が信じたわたくしはー」
「この程度では、屈しませんわよぉおおおお!」
とても優雅とは程遠い、貴族とは思えないような戦い。
そもそもなんでこの本を買おうかと思ったかなんですけど、確かに裏のあらすじが良かったとか百合かもって理由とかあるんですけど、何より決め手だったのが後ろの帯の絵なんですよね。
顔がいいお嬢様が頭から血を流し叫びながら踏ん張っている。
むちゃくちゃいい。
最後まで見栄っ張りを貫くところがたまらなくかっこいいですよね。
前半では本当にどうしようもないなこいつとしか思えなかったですけど、高慢と虚勢もここまでくると天晴れ。 気持ちが良い。
こんなの好きになってしまう。
世界に輝くと叫ぶリルドールの姿には心が震えました。
いや~~よかった。 予想の150%くらいよかった。
見栄っ張りで高飛車でそのくせ一人では何もできないようなお嬢様が、世界に輝くために這い上がる物語。
いや、もう設定が良いわ。 はいはい降参降参って感じw
凡人のリルドールを、天才であるコロが支える構図なんですけどね。
まぁ天才であるコロもすごいんだけど、やっぱりねどれだけボコボコにされようが立ち上がって見栄を張るリルドールがね、超すごくてかっこいいんだよね。
どんだけ格上の相手でも関係なしに威勢のいい口上を述べる様子はとにかく熱くなります。
しかも立ち上がった理由がコロを馬鹿にされたからときたらこりゃ百合好きにはたまらんでしょう。
百合的にはどうなんだよって話ですけど、一応一緒にお風呂入ったりとか添い寝してたりとかそういうシーンはありましたね。
キャッキャウフフはそれくらい。
あとリルドールがコロに甘々でかわいいです。
「ほかの有象無象はともかくコロをお猿さん扱いはおやめなさい。ちゃんと簡単な読み書きもできるなりつつありますし、足し算引き算の習得も頑張っているできる子ですわ。」
嬉しいんだろうな・・・きっと。
こういう妹分ができたの初めてだろうから。
コロがリルドールを慕い、リルドールがどや顔をかます一連の流れは見ていてとてもほほえましいです。
というかこの小説を熱血+百合と言いましたが、その熱血部分がコロのリルドールへの憧れとリルドールがコロのために張る見栄で出来ているなら、もはや百合小説と言っても差し支えないと思います。
恋愛的な要素はないですが、いやいいもん見れたわ・・・。
というわけで『嘘つき戦姫、迷宮をゆく』でした!
普段はあまり冒険ファンタジーは読まないのですが、見栄っ張りお嬢様が主人公という設定とそのお嬢様が血反吐を吐きながら這い上がるという話に惚れてしまいました。
期待を裏切らない内容でとても面白かったです。
2巻に続くとあるので次も出てくれるのでしょう!
個人的には一度も役だってないリルドールのレイピアが今後どう活躍するのか気になりますね・・・。 必殺、エストック・ぶれなんとかってやつ。
出番あるのでしょうか。
最後まで読んでいただきありがとうございました
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