漫画『マリア様がみてる』が最高のコミカライズだった

漫画『マリア様がみてる』が最高のコミカライズだった

『マリア様がみてる』の漫画を手に入れた。

マリみては大好きな作品の一つなので、一時期この漫画版をとても探し回っていたが、発行が2004年とかなり昔なこともあってなかなか見つけることができず。諦めてしばらく経ったが、書店の閉店セールで全巻セットが売っているのを最近発見した。アンテナを張り続けるって大事。

 

 

『マリア様がみてる』は、百合小説界の金字塔とも名高い作品だ。一応あらすじを説明すると、

舞台は筋金入りのお嬢様学校の、私立リリアン女学園。一年生の主人公、福沢祐巳は登校中にとある美しい上級生から声をかけられる。この時かけられた一言が、かの有名な「タイがまがっていてよ」だ。

声の主は小笠原祥子様。才色兼備で美貌から立ち振る舞いまですべてが美しく、学園中から一目置かれる、お嬢様中のお嬢様だ。祥子様は祐巳のタイを結び直してあげると、優雅にその場を立ち去っていくのだった。

 

ところで、私立リリアン女学園には特徴的な制度が二つある。

一つ目は『姉妹制度』。学園の生徒同士で疑似的な姉妹関係を結び、学内での面倒を見るという制度だ。上級生が下級生の中から気になった子を選びロザリオを渡すことで成立し、晴れて二人は疑似姉妹となる。

もう一つは『山百合会』。リリアン女学園では生徒会が存在せず、代わりに”山百合会”という組織によって管理されている。山百合会を運営するのは”紅薔薇さま”、”黄薔薇さま”、”白薔薇さま”と呼ばれる三人の三年生だ。薔薇さま達は学園のスターともいえる存在で、生徒たちからは絶大な信頼を寄せられている。ちなみに祥子様は紅薔薇の妹だ。

 

さて、祥子様にタイを直されている様子は祐巳の友人によってバッチリと撮られていた。写真を写真部の展示コーナーに飾りたいという彼女のために祥子様に許可を貰おうと、祐巳は山百合会が普段活動している”薔薇の館”を訪れる。

そのころ、薔薇の館の中では薔薇様たちと祥子様が、今度山百合会が行う予定の劇『シンデレラ』の件でおおもめしていた。祥子様はどうしてもシンデレラ役をやりたくないが、薔薇様たちは「妹一人作れない人に発言権はない」とつっぱねる。思わずその場を飛び出す祥子様だが、その扉の先にはちょうど祐巳がいてぶつかってしまう。

どうしたらシンデレラ役から逃げられるかと考えていた祥子様は祐巳を起こすと部屋の中に招き入れ、そして薔薇様たちの前で高らかにこう宣言した。「お姉さま ご報告いたしますわ」

なんと祥子様はシンデレラをやりたくないあまり、その場にいた祐巳を妹にすると言い出したのだ。

どういう運命か、昨日まで平凡な生徒だった祐巳はここから山百合会の騒動に大きく巻き込まれていくことになる。

実は祐巳はこの誘いをその場でつっぱねるのだが、その理由が「祥子様のファンだから」で、推しは大好きだが自分が推しと関わるのは違う、という行動があまりにもファンの鑑すぎて大好き。

 

 

祐巳が祥子様から声を掛けられるシーン。見るとわかる通りファンがコミカライズに求めていたものが全て詰まっている。手書きの「ぎゃー」もいい感じ。

正直表紙を見たときからこのコミカライズは絶対“”””正解””””だと伝わってきていた。とにかくビジュアルが素晴らしく、山百合会のメンバーの溢れんばかりのカリスマも余すことなく表現されている。

 

今までたくさんの漫画を読んできたが、実は少女漫画をしっかりと読んだことがなく、マーガレット連載のマリみてはとても新鮮に感じた。

コマに収まりきらない少女たち、コミカルなデフォルメキャラ、ぽわぽわとした優しいトーン。コマ割りも独特で、コマを割るというよりは一連の流れのところどころにコマを配置している感じ。コマで区切られているというイメージがないのでより世界に入っていきやすい。

 

 

マリみて全編の中でもお気に入りのセリフの一つ。祐巳と祥子の関係を探ろうとする野次馬に対する一連の流れ。

SNS社会の現代でも通用する的確なコメント。炎上した後、さらに失言を重ねたりフォローになってない謝罪で火に油を注ぐ人達に見習ってもらいたい。まぁ山百合会で一番SNS炎上しそうなのは祥子様なのだが。

 

 

1巻で一番好きな一コマ。本当なら一般生徒Aである祐巳が、山百合会という学園のアイドル達と共に過ごせた時間は正に夢のようだった。それも学園祭が終わってしまえば醒めてしまう。平凡な生活へと戻る寂しさが表れたいい表情だ。

マリみてでお気に入りの巻はたくさんあるが、シンデレラストーリーとして完成している1巻が一番好きだ。全学生が夢見る祥子様の妹にひと時だけなれるという喜びと儚さがとてもいい。

 

マリみてコミカライズ、好きなシーンが絵になる楽しさがあってかなり良かった。

生まれて初めてファーストフード店に行った祥子様が、カウンターで出された注文の品を店員が持ってきてくれるものと勘違いし、無言でその場を立ち去ってしまうという大好きなシーンがあるのだが、これを改めて絵に起こされるとよりシュールになっていて笑った。

なかなか手に入れられないため気軽に勧められないが、ファンなら絶対に楽しめるはずなので探してみる価値はあると思う。

とか言ってたら普通に電子版があった。

 

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