ちびまる子ちゃんの泣けるおねロリ回を紹介させてください

ちびまる子ちゃんの泣けるおねロリ回を紹介させてください

私が初めて出会った漫画は『ちびまる子ちゃん』でした。

母が漫画好きだったため、私の家にはたくさんのマーガレットやらリボンコミックスがありました。しかし、ベイブレードと遊技王が強いやつが尊敬を得られるシンプルな世界に生きていた私に少女漫画の複雑な人間関係の展開が理解できるはずもなく、私が母の漫画を読むことはほとんどありませんでした。

ただ、その中でも恋愛要素がなく目もキラキラしていないという理由で唯一好んで読んでいたのがちびまる子ちゃんでした。

 

ちびまる子ちゃんだけはやたら数がありました。

何故かはわかりませんが、一巻と二巻はそれぞれ四冊ずつ、他の巻も二冊揃っていたりしました。当時の私はどういう買い方をしたら同じ漫画が複数冊揃うのか不思議でしたが、今では私は無事に同じ漫画を複数冊買う大人になりました。血筋でしょうか。

 

そんな感じでちびまる子ちゃんと共に育ってきた私ですが、今思うとあれは百合だったなというエピソードがいくつかあります。

今回はその中でも屈指のおねロリ回である『わたしの好きな歌』を紹介させていただきます。

 

 

 

物語はまる子達が音楽の授業で合唱をしているシーンから始まります。

彼女達は『めんこい仔馬』という歌の練習をしていました。自分の仔馬を可愛がる喜びを歌った微笑ましい歌です。動物が大好きなまる子はもし自分にも仔馬がいたら・・・と想像を膨らませます。『めんこい仔馬』はすぐにまる子のお気に入りの歌になりました。

 

 

ある日、まる子は静岡のおばあちゃんの家に向かう途中で絵描きのお姉さんと出会います。

お姉さんは客のおじさんの似顔絵を描いていましたが、描き直しを要求されてしまいます。しかし、その一部始終を見ていたまる子の一言によりおじさんの機嫌は治り、その場は丸く収まりました。この一件をきっかけに二人は仲良くなります。

 

 

まる子たちの図画の授業で”自分の好きな歌”という課題が出されました。まる子は大好きな『めんこい仔馬』の絵を描こうとしますがなかなか上手くいきません。そこで思い出したのはあの絵描きのお姉さんでした。まる子は再び彼女に会いに行くことを決めます。

 

たった一回会っただけなのに、既にお姉さんの存在はまる子の中でかなり大きくなりつつあります。

「私、なんであの人のためにここまでするんだろう」という百合の教科書に載ってそうな感情が登場し、あまりにも本格的なおねロリの導入にビビります。言葉だけでなく文脈も数々の百合で見てきたシチュエーションそのものなんですよね。これ百合姫の漫画じゃなくてちびまる子ちゃんなんですよ。

 

 

再会を果たした二人。お姉さんの家に遊びに来たまる子は、学校では教えられなかった『めんこい仔馬』の真実を知らされます。それはこの歌には実は続きがあり、その内容は大切に育てた仔馬が軍馬として戦場に送られるというものでした。あまりにも残酷な結末にまる子は涙してしまいます。

そこでまる子はお姉さんの提案でいつかお別れしてしまう日が来ても仔馬を思う気持ちは永遠に変わらないというイメージで課題を描くことにしました。まる子に感化されたお姉さんも同じテーマでコンクール用の絵を描くことを決めます。

その後もまる子とお姉さんは交流を続け、お姉さんの婚約者とともぞうも連れて水族館に遊びに行ったりとさらに仲を深めていきます。

 

 

ここで見逃してはいけないのが、妹が他の人を姉と慕うのが気に食わない実の姉という姉妹百合好きが鼻血を噴き出して倒れてしまいそうな関係性です。

 

昔読んだときはわかりませんでしたがが改めて見ると、さきこの露骨におもしろくなさそうな態度が感じ取れます。妹を案じる気持ちと知らないお姉さんへの嫉妬の表れた絶妙な表情です。

ふいにむき出しになる姉としての本心。普段は喧嘩ばかりで姉であることにも辟易していると思いきや、その立場への執着が見てとれます。突然現れるナイーブな姉妹百合に完全にノックアウト。もしもさくらももこ先生が百合漫画を描いたらがここに実現しているんですね。

ちびまる子ちゃんといえば日常コメディの印象が強いですが、短編などを読むとわかるようにさくらももこ先生はコンプレックスや自意識といった繊細な感情を描くのが抜群にうまいのです。

 

 

まる子の描いた『めんこい仔馬』の絵が学校のコンクールで入賞しました。まる子がそれを伝えにお姉さんの家の前まで来たところ、そこではちょうど彼女と婚約者が深刻な話をしている最中でした。

東京で絵の勉強をしたいお姉さんと北海道で父の牧場を継ぎたい婚約者。二人の話はまとまらず、婚約者は立ち去ってしまいます。立ち尽くしてしまうお姉さん。

まる子は話しかけます。絵は北海道でも描けるがあのお兄さんは一人しかない、と。大事なことに気づいたお姉さんは大切なあの人を追いかけていきました。

 

実はまる子にはプサディーという遠い異国の親友がいます。

南の島に行ったときに現地で出会った女の子です。小さな町で変わらぬ人々と変わらぬ生活を送るまる子にとって、言葉も文化も住む世界も異なる友達との出会いと別れは強烈な経験になりました。お姉さんにかけた言葉は、会いたくても二度と会えないプサディーという存在がいるまる子だからこそ言えた重い言葉です。

 

 

再び婚約者と縁を戻したお姉さん。めでたく結婚も決まります。

しかし、それはお姉さんが遠い北海道に行ってしまい、まる子と会えなくなることを意味していました・・・。

この後の展開は是非自分で読んでみることをお勧めします。小さな体に大きな想いを背負ったまる子。大好きなお姉さんのために走る姿は何回見ても泣いてしまいます。

 

おねとの出会い、別れを通じてまる子は少し大人に成長し、おねはまる子の純真さによって人との繋がりの大切さに気づくというおねロリとして傑作な話でした。たとえ離れたとしてもお互いを思う気持ちは消えないというテーマも完璧。

おねは別れの大切さを知ったまる子の心に一生残り続け、おねにとってまる子もまた人生を変えてくれた女の子として残り続けるはず。

幼少期の頃に出会ったお兄さんお姉さんという存在は、当時のその人の年齢を超えても自分の中で年上の存在として残り続けます。ロリの心に残り続けるおねという構図にとてつもない永遠を感じます。

 

『わたしの好きな歌』は劇場版のエピソードをさくらももこ先生が漫画として書き下ろした作品です。 単行本一冊にまとめられていて読みやすいので是非。

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