あだしま、えっちしたし添い遂げたよ【安達としまむら 8巻】

あだしま、えっちしたし添い遂げたよ【安達としまむら 8巻】

嘘じゃありません。

安達としまむら8 (電撃文庫)

 

入間人間先生の『安達としまむら』8巻です。

 

の前におめでとう。

2年半の沈黙を破り登場した8巻、そして再コミカライズ。 タイミング的にアニメしかないやろという感じはありました。

安達としまむらのアニメは長年望まれていましたが、心理描写が多く映像化しにくいということもあり百合好きの儚い夢という扱いでした。

今回アニメ化が叶ったことで、やはりここ最近の百合作品アニメ化の流れはまだ衰えてないなと感じます。

 

アニメにするとして、ただ起こった出来事のみを映像化すると女子高生二人がゆるく生きているだけの作品になってしまうので安達の内心やしまむらの人生観とかもしっかり描写して欲しいところですが、そういうのは大体地の文で書いてあるのでそれをどうやってアニメに起こすのか、すごく難しそう。

 

まぁその辺は放映時に楽しみにするとして、ここでは取り急ぎ8巻の感想を書かせてください

 

読み始めていきなりいつもと様子がおかしい。

二人で借りたマンション。二人で決めた場所、二人で生活する空間。

安達としまむらが同棲している。 なんで?

 

彼女たちの姿を見るのは実に2年半ぶり。 それをいきなり27歳で同棲しているあだしまで始めるのは心臓に悪いのでやめてほしい。 体がびっくりして背中に変な汗かいてきた。

こっちは暫くぶりすぎて体が慣れてないので優しい運転を心がけてほしい。

 

同棲という未来、それは全てのあだしま民が心に抱く夢の理想郷。

失礼、主語がデカすぎました。 自分が、でした。

しかし、ここまで上手くことがいきすぎていると夢オチを疑い始めるのがオタクの性というもの。

同棲じゃん!!!いぇーーーい!!!!と素直に喜べるほど単純に生きてきたわけでない。

読み手を置いてけぼりにする導入は夢オチの可能性がかなり高い。 ある程度の経験を積んだオタクなら本能で身構えてしまうのも仕方がないというもの。

「へぇ・・・ふーん、いいじゃん」

むやみに傷つくことを防ぐためにもこれくらいのスタンスがちょうどいいと思うのですがどうでしょうか。

 

 

話は高校生時代へと帰ってくる。 高校二年生の10月、彼女らは修学旅行を控えていた。

 

班決めの時間になった瞬間、しまむらの元へと速攻で駆け寄る安達。

「班は、一緒で」

安達にとっての修学旅行はしまむらと行動できることが全てであるため、一緒の班になれるかどうかは安達の中で世界を揺るがす最重要事項となる。 この辺は想定通りの見慣れたいつもの安達で安心する。

 

しかし、残念ながら二人は班ではない。 二人はペアと呼ぶのだ。

班というからには複数人が必要になる。 安達としまむらだけでは班を作ることができない。

そんな二人の前にタイミングよく声をかけたのは懐かしきサンチョ、デロス、パンチョの三人組。

この三人に関しては何巻で登場して何をしてたのか全く印象がない。 ただしまむらにつけられたこの適当そうな名前からして大したキャラではなかったことは確かなはず。

 

ともかくここに安達としまむら、サンチョ、デロス、パンチョの三人を組み合わせた班が誕生した。

そしてしまむらにとっては班の中で安達との世界、そして他者との世界という絶対に交わることのない二つの世界が産まれてしまった。 これはキツい。

班が決まった時点ですでに場の空気が軋み始め、心臓に悪い。

 

しまむらは今なお外の世界との付き合い方を探っている最中だ。 他人と繋がることの必要性をわかっていながらもそれを器用にこなせない彼女は人と関わることの難しさによく頭を悩ませている。

安達とうまくやりつつ三人とも仲良くする。 それができれば苦労はしない。

この修学旅行はしまむらにとって安達か他者かの決断を迫られているともいえる。

 

安達はいい。 安達の世界観はシンプルなので。 安達の世界にはしまむらしかいない。

それ以外の人間はその辺の石と等価値。 清々しくて大変よろしい。

 

 

つかの間の旅行を楽しむ安達としまむら。

修学旅行中二人の距離はべったり、常に一緒だ。 安達は当然としてしまむらが案外べったりなのだこれが。

 

しまむら達とサンチョ達との距離感は微妙だ。 しまむらだけならまだしも安達がいることで二人と三人の間にはなかなか埋まりにくそうな溝ができてしまっている。 そしてこの仲を取り持つことになるのは当然しまむらだ。

しまむらが彼女らと接するのを避け、安達と一緒にいる気持ちはわかる。

コミュニケーションがギクシャクすることは避けられないし、その錆び付いた人間関係によって苦しくなるのはしまむらだけだからだ。 せっかくの旅行だから楽しく過ごせた方がいいに決まっている。

 

 

外はそれでいい。

部屋ではそうはいかない。

 

密室に五人。

物理的な距離を保つことで互いに干渉してこなかった二つの世界が両サイドからしまむらを圧迫する。

安達との関係を保ちながら、三人とも仲良くできるほど彼女は器用ではない。 どちらかとうまくいけばもう一方はうまくいかなくなる。

そしてしまむらは安達と一緒に部屋を飛び出してしまう。

 

 

 

部屋での修羅場はさておき、修学旅行となれば当然発生するイベントがある。 お風呂だ。

 

あの安達がしまむらとお風呂に入ってしまったら。 裸で同じ空間に放り込まれたら一体何が起こってしまうのか。

読者が安達への期待を膨らませていく横で、ノーマークだったしまむらが暴走を始める。

「わたしが気づかないように、その、上手くみて・・・ね?」

一体何が行われているのか。 この子たちは一体何をやっているのか。 安達としまむらの急加速はまたしても読者を置いてけぼりにした。

修学旅行はこうも人を狂わせるのか。

 

クラスメイトの前で行われたエクストリーム露出にも思えなくもないこの行為だが、しまむらも急に痴女めいたことがしたくなったわけではない。

温泉で同性に肌を見られることはごく当たり前のことである。 しかしなぜ、あえて安達に自分の体を見せたのか。

これは二人にとって初夜と同意義があったのではないかと思う。

しまむらは安達の自分への興味に気づいていた。 恋人として自分をどう見ているのか認識した上で、そして自分から受け入れた。

二人の間確かにある愛情を感じ、そして肌を重ね相手を受け入れることと何も変わらない。 これは二人にとっての百合えっちと言ってもいい行為だったといえる。

実際このお風呂を越えたしまむらの考えは大きく変わる。

あれだけ二つの世界で悩んでいたしまむらはその夜、三人がすぐ近くにいるにも関らず、布団から伸ばした安達の手を握る。

この修学旅行はしまむらにとって安達か他者かの選択という意味があった。

だからこんなのが私の修学旅行なんだろう

しまむらは安達の世界を選んだのだ。

 

 

そして翌朝、しまむらはたまたま出会ったパンチョに安達との関係をカミングアウトすることになる。

「でもそういうしまむらさんが一緒にいるってことは、よっぽど安達さんのこと気に入ったんだね」

パンチョの言葉にハッとさせられるしまむら。 安達ばかりがしまむらを特別な関係と思っていたのではない。 自分が気づいていないだけでしまむらにとっても安達は特別な関係だったのだ。

 

そしてその後の霧のシーンでしまむらの気持ちは確固たるものとなる。

彼女たちを乗せたバスは濃い霧が立ち込めるエリアへと向かう。 霧を体験するため、バスを降りて外へ出る学生たち。  しかしすぐ近くの人すら見えない霧のあまりの濃さにしまむらは安達を見失ってしまう。

何も周りが見えない状況にしまむらは過去の自分を重ねる。 そして何よりもまず浮かんできたのが安達だった。

しまむらは一度安達を受け入れ、そして失うことで彼女の必要性を再確認した。

もう怖いものなどない。 世界はこの霧のようにわからないことだらけだが、しまむらは安達と共にこの世界で生きていくことを決めた。

 

そしてそんな二人の決意を表したのが冒頭と最後の海外旅行のシーンだ。

しまむらは修学旅行に行く前、安達にサンフランシスコに行こうと誘われたがあまり気乗りしていなかった。 すぐ先の未来すらわからない彼女にとって10年後と言われてもそんなのわかるわけがない。 安達といるかどうかもわからないのに、一緒にサンフランシスコに行くイメージが湧いてこない。

しかし、今しまむらは安達と歩んでいくことを決めた。 これからの自分達の未来がはっきりと見えるようになった。

故に冒頭の海外旅行はあだしま民が見た集団幻覚ではなく、二人で共に歩む未来の象徴として確定した。

あだしまは添い遂げた。

 

故に私は「安達としまむらの8巻どうだった?」と聞かれたら高らかにこう答えるのだ。

「あだしま、えっちしたし添い遂げたよ」

 

 

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