森奈津子先生の『姫百合たちの放課後』です。早川書房から出版。
百合の官能小説!ということで速攻で本屋に探しに行った覚えがあるけど、多分いろいろ間違えた。
自分の予想してた官能小説と540°くらい違ったwこの小説はおかしい(褒め言葉)
いろいろお下劣な内容が多いので注意。(というか下ネタしかない)
九つ程の短編から成っているのでいくつか紹介します。
・姫百合たちの放課後
表題作です。
とある少女は同じ学校の上級生の女の子に密かに想いを寄せており、放課後にピアノを弾くその姿を遠くから見惚れているのが日課となっていた。
ところがその上級生にボディービル同好会の会長(女)が親しげに話しかけているのを目撃してしまう。
このままでは加虐趣味を持つと噂されている会長によって、憧れの上級生が毒牙にかかってしまう!そう思った少女は、女たらしで有名なクラスメート(女)に会長をたらしこんでもらうように依頼する。
が、実はクラスメートは少女のことが好きなのだった。
最初の2ページくらいは読んでて「マリア様のお庭に集う乙女たちが、今日も天使のような笑顔で・・・」で始まるマリみてのナレーションが聞こえてきそうな雰囲気だったから、女学校の儚い恋とかそういう感じかとか思ってたら全然全く違った。
「ぢゅんこーっ!ぢうんこーっ!ぢ・うんこーっ!」
こんな可憐で清楚な少女達の秘め事を思わせる表紙の本に、こんな言葉が出てくるとは誰が思っただろうか。
なんだこれは。ブッとんでいる。
普通女の子しか出てこない話ならキャッキャウフフか揺れ動く乙女心を描いた恋物語になるはずであるのに。あれ?これ恋の話だよね?
「さあ、おとなしく来るんだよ。放課後には、おまえはあたしの奴隷だよ!」
「も、もう、勘弁してくださいよぉ。体が持ちませんよぉ」
「昨日のプレイは、ちゃんとビデオに撮ってあるんだよ。そいつを公開されたくなきゃ、あたしと一緒においで」
「純子ーっ!責任とれーっ!」
会話の内容がトビすぎてて笑うしかないw普通に考えたらエグい話にエグい展開がポンポコ進んでいるんだけど、悲壮感や残酷さというのは全くないから不思議。
全然重たくないので「あららー」と笑い飛ばせるw
交換日記という形式で書かれた続編の『姫百合日記』も面白くて笑ったw
クラスメートは会長に(性的に)ボロボロにされて、程のいいように使われて、交換日記の中でも少女と喧嘩ばかりなんだけど、それでも少女に口を聞いてもらえなくなる度に、交換日記で謝りだすのがすごい健気で可愛かった。
こんな可哀想な恋する乙女見たことない。
・花と指
「古来、自慰行為は性行為以上に隠蔽されてきた。~(略)。
しかし時代は変わった。二十一世紀に入り、自慰行為には心身を健やかに保つ効果があるという事実が知られていくにつれ、オ○ニーはスポーツだとの認識が人々の間に広まっていったのである。
いかに美しく独創的なオ○ニーをするか。それを競う競技が生まれるのに、長い年月は必要なかった。「自慰道」と名付けられたそれは、柔道と共にわが国で生まれた競技として世界中に広まり、愛好者を増やし、オリンピックの正式種目に加えられるまでになったのである。」
もう何もわからない。どういう発想をしたらこんな話が作れるのか。
神奈川女子体育大学自慰道部のエースである美麗と自慰道部ではあまり目立たないチヨが登場人物として話が進んでいくのですが、誰も自慰道にはツッコミません。
至って大真面目に話が進んでいくので、こっちがあれ?自慰ってバレエの一種かなんかだっけ?と不安になる程。
真っ直ぐな部活動青春物です。
これだけ馬鹿な設定でもちゃんと恋を絡めて話にするのがすごい。
でもやっぱり設定がアホすぎて読んでて笑うw
・お姉様は飛行機恐怖症
親の再婚により、義理姉妹となった二人の話。お互いに仲良くなりたいとは思っているが、イマイチ仲を深められずにいる二人は親睦を深めるため香港へ旅行へ行くことに
ただし姉は極度の飛行機恐怖症だった・・・。
姉が機内でひたすらガクブルし発狂する話。一番笑った話かもしれない。
自分も飛行機がとても苦手なので姉の気持ちがよくわかる。
雲の上の上、地球って丸いんだ・・・とわかるほどの高さを飛んでるときに、ふとなんで飛行機って飛んでるんだろうって科学を信じられなくなる時ってあるよね。
一度オーストラリアへ行く途中で乱気流に突入して、フリーフォール状態になったときは失神しそうになりました。むしろ失神したかった。
最初は不安になる姉を妹が優しくなだめるんだけど、姉がどんどんエスカレートしていくのに連れて妹もどんどん激しくなっていって機内で漫才みたいになってるんだよね。
「も、もう、これ以上、昇らないでっ!」「高度なんて気にしちゃだめだよ。大丈夫だから。」
↓
「いいえ、気休めは結構よ!やっぱり、私の勘は当たっていたんだわ!この飛行機は落ちるんだわ!ああ、いやっ!助けてっ!」「ああ、もうっ!『助けて』はこっちの台詞だっ!あたしゃもう、恥ずかしいよっ!」
↓
「いっそ、あんた、処刑されろよ。」「え、縁起でもないこと、言わないでっ!」
ここまで言えるようになったらもうお互いわだかまりなんてないよねw
まぁ何はともあれ少なくとも距離は縮んだんじゃないかな(適当)。よかったよかった。
以上気に入ったものを三つ紹介しましたが他にも地球滅亡の危機を救うために全人類の前でエッチをする『2001年宇宙の足袋』、お嬢様学校にヤンキーが乗り込むも逆にお嬢様によって襲われてしまう『一九九一年の生体実験』など他の話もいい意味でおかしい話ばかりでした。
いい意味で気取ってないというか堅苦しさがないというか。病院の待合室とかでも何にも気にせずに読めました。
サクッと読めて、笑える百合官能小説ってなかなか珍しいというか多分誰も書こうと思わなかったと思う。
何というか読んでみて思ったのは、女の子というか百合に対して容赦がない。全身筋肉のアマゾネスも出てくるし、女の子にスカトロジーという単語を言わせることも厭わない。
他の作家さん達が慎重に繊細に扱っているものを、ガシッと掴んで「よいしょーっ!」と大胆かつ好き勝手に書き上げた感じ。
確かに人を選ぶかもしれませんが、しかし百合として超えてはいけないラインは超えていないです。
安易に男が出てきたりとか、これもう百合じゃなくてええやんといった展開はありません。
それは作者が百合を熟知し、どのように扱っていいかをわかっているからこそ書き上げることができた小説だと思います。
好き嫌いは分かれると思いますがオールラウンダーに百合好きの人なら是非読んでみてください。きっと楽しめると思います!
最後まで読んでいただきありがとうございました!
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