以前からずっと読んでみようと思っていたのですが二日ほど前についに買うことができたので紹介しようと思います。
川端康成さんの「乙女の港」です!
だってノーベル賞作家の書く百合ですよ?気になりませんか?
世界中に認められた実力の小説家が書いた百合ならそれは世界中が認めた百合ということでは?w
元々今の百合を追いかけるのもいいけれど百合の源流を辿ってみたいと思ってまして、軽く調べてみた結果なんとあの川端康成さんが百合の前身であるエスの小説を書かれていたと知りました。
この『乙女の港』や吉屋信子さんの『花物語』を初めとするエスの小説がのちの百合文化に通じる大きな流れを作ったということは言うまでもありません。百合小説の金字塔といったところですかね。そりゃあ読んでみたくなりますよ!
まずびっくりしたのが最初で本の紹介してるのが瀬戸内寂聴。やっぱりノーベル賞作家は違ったよね。
当時田舎の一学生だった瀬戸内寂聴さんがハマるくらいだから全国的にもエスの文化って結構根付いていたのかな。この時代は自由な男女交際が厳しかったらしいからむしろ今よりも広まっていたかもしれないですね。
・百合学園ラブコメやんけ!
実際どんな内容なのかというと
時代は昭和初期、横浜のミッションスクールに入学した三千子は洋子と克子の二人からほぼ同時にエスの申し込みを受ける。洋子の申し込みを受けたものの、克子は三千子に対して熱いアプローチを続け、三千子は二人の間で揺れ動く。って感じです。
上品で心優しい洋子と勝ち気でスポーティな克子の二人のお姉様と三千子の三角関係ですね。今漫画とかで出てもいけそう。ってか出てそう。
克子はすごいグイグイいくタイプで結構嫌味とか言っちゃったりして最初はあんまり好きじゃなかったんだけど読んでるうちに実は強い芯を持った子だってわかって好きになりました。三人とも魅力的な子です。
・エスの文化
あと読んですごい驚いたのは上級生が下級生を一人選んで疑似姉妹になるって設定が出てきたこと。いわゆる「お姉様」ってやつでこの関係のことをエスと呼ぶんですね。これ完全にマリみてのスールまんまだなと思いました。
勉強不足な自分は完全に「マリア様がみてる」が元祖だと思ってました。まさかこんな昔からこの制度があったとは・・・。むしろ川端康成も現実にあった設定を使っただけでエス自体はもっと昔から存在していたのではないかと思います。
まさかこんな夢みたいな世界が現実に合ったなんて・・・素敵すぎる。
・これがエスの破壊力・・・!
エスっていっても仲のいい上級生と下級生でしょ?って思ってましたが全然そんなことはなかった。エスにはエスで今の百合とは違う良さがあったよね。
そういう時代だったのかな?全体の雰囲気として口には出さない奥ゆかしさみたいなのがあって三人とも俳人かな?ってくらい風流。
洋子が三千子にエスの申し込みとして手紙を渡したんだけどそこにはいろんな花の詩と共に最後にお慕わしき三千子さまって書いてあるのね。たまらん。
克子に至っては「なんてお言葉をかけようかしらと、毎晩お床の中で案じていましたの。」「あなたを「私のすみれ」とお呼びしてよろしいでしょうか。」などと書かれた手紙と共にすみれの花束を机に置くレベル。あゝロマンティック!!
確かに今と違って愛とか好きだとかいう直接的な言葉は出てこないものの洋子と三千子の熱いエスの繋がり、克子の三千子に対する気持ちを感じることができました。
三千子がいたずらで隠れてることを知らずに洋子が必死で三千子を探すシーンがあるんですけどそのあとの
>「今はじょうだんに体を隠しただけだから、いいけれど、三千子さんが心を隠してしまったら、私どうして捜せばいいんでしょう」
>「いや、そんな・・・」と、三千子は洋子の腕を揺すぶった。
>「ふっと、そう思っただけよ。でも、あたしはどんな遠くにだって、三千子さんの心を捜しに行ってよ、きっと。」
ってところでもう泣きそうになりました。なんて美しいシーンなんだろう。お姉様偉大すぎる。洋子の三千子を思う気持ちには感動させられっぱなしでした。
二人で子牛に名前つけるところでアラクネって名付けてたのはちょっと笑っちゃったけど。
ものすごい久しぶりに活字の本というものを読んだので上手くとっつけるか心配でした(ここ数年で読んだのは安達としまむらくらいw)
乙女の港が連載されてたのって80年くらい前なんですよね。頭の中で勝手に竹取物語くらいの古さをイメージしてたんですが全然そんなことなかったw
古さを感じさせないでいてそれでも当時の時代背景とか雰囲気がすごい伝わってきておもしろかったです。さすが川端さん。
百合が好きだという人ならだれでも一読してみることをおススメします。エスの良さ、そして百合の世界に歴史に思いを馳せれると思います。吉屋信子さんの本も探したんだけどなかった・・・。次もし見つけたら是非読んでみたい!
最後まで読んでいただきありがとうございました!
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