突然だが、ギャルをギャルたらしめるものとは一体なんだろうか。
ギャルがギャルであるためのアイデンティティ、つまりギャルの核となるような要素はあるだろうか。
意見は色々あると思うが、席替え直後に隣の陰キャに絡みに行く気兼ねの無さ、遊びの誘いは基本二つ返事なフットワーク、言うなればその”軽さ”について触れないわけにはいかないだろう。
快女児とも言うべき、カラッとした気持ちよさ。この軽さがもたらすどうしようもない眩しさに、クラスの地味子は抵抗もむなしくやられていく。
しかしここに、あるまじき重さ、凄まじい湿り気を持つギャルが登場する漫画がある。それがsugar.先生の『オタクに優しいギャルに私はなる! 』、通称”オギャなる”だ。今日はこの話をする。
ざっくりとストーリーについての話をすると、元オタクが友達を作るために高校からギャルデビューしてイェ〜イ!という感じの話。
ギャルによる『友達100人できるかな』と言い換えても良い。
主人公のあいりは見た目からしっかりとギャルになっているため、クラスのオタクたちからおののかれてしまうが、根がオタクの彼女は彼女らの心理に共感できるため、twitterにしか存在しないはずの「サブカルに明るいギャル」としてオタクの心を開かせていく。
当初彼女に距離を置いていたオタクはいつの間にか彼女に心の底を晒すことになる。こうして一人、また一人とクラスメイトたちは彼女に攻略されていくのだ。
しかし、例のギャルは彼女ではない。彼女は”軽い”。
彼女のクラスにはギャルがもう1人いる。彼女の名はなぎ。あいりとはギャル友達だが、ギャルに成ることを選んだあいりと違い、彼女は本物、生まれつきのギャルだ。
あいりの他に友達はいないが、それに引け目を感じることはなく、自分からセコセコと友達を作りにいくことはしない。その圧倒的強者のオーラに自ら近づいてくものは少ないが、それを別に気にしないのがその強者たる所以。
クラスカーストの上位に立つ、いつも一緒にいるギャル二人組のクール担当。それがなぎ。
初めに風向きが変わったのはは一巻の中盤だった。バイトをしていたなぎは、あいりが自分以外の友達と遊んでいる現場をたまたま目撃。ピシャリと空気が変わる。
出典:オタクに優しいギャルに私はなる!1巻
さらに、後日、あいりの待ち受けがその友達とのプリクラになっていたことでなぎのスイッチがon。
私怨で膨れ上がったなぎの口から出てきたのは「あいりは別にオタクの友達がほしかっただけで、お前と友達になりたかったわけではない」という本人にぶつけるにはあまりにも強すぎる呪詛。三人で仲良くやっていく、のではなく明らかにあいりから友達を引き剥がそうとしている。
出典:オタクに優しいギャルに私はなる!1巻
結果、その友人の器量のデカさでその場はなんかうまいこと収まるのだが、普段は穏やかななぎが突然見せた豹変に我々読者は何か恐ろしいものの鱗片を存在を感じることになる。
何がすごいって、あいりに新しくできた友人であるなら、それはもうなぎの友人でもあるのに、その雰囲気が全くしないことだ。もしかして、なぎは今まであいりしか友達ができなかったのではなく……あいり以外の友達を作ろうとしなかったのでは……?
あの一瞬見せた巨大な影はおそらく夢だったに違いない。あれは嫉妬が少しいき過ぎてしまっただけ。見なかったことにしたい我々の願いも虚しく、2巻ではなぎの心に潜む怪物に焦点が当たることになる。
出典:オタクに優しいギャルに私はなる!2巻
友達を一回やめる……?やれるのか!?
出典:オタクに優しいギャルに私はなる!2巻
友達をやめた結果、あいりが新たな友人と親交を深めていく様をまざまざと見せつけられることに。だからやめとけって言ったのに!!!!!!
出典:オタクに優しいギャルに私はなる!2巻
重すぎるギャルの感情の行方は……。
主人公の隣に潜んでいたあまりにもヤバすぎるギャル。その重さに百合界隈が揺れたのを覚えている。
みんなこういうの、好きでしょ?(手招き)