いきなり本題に入ろう。
買ってきました。読みました。バカくそ笑いました。
江島絵里先生の『対ありでした。 ~お嬢さまは格闘ゲームなんてしない~』3巻。まだ読んでませんか?読みましょう。
出会ったときと変わらぬ速度で今も私の心を駆け抜けている作品。読むタイプの清涼剤とも言う。「なんかよくわからんが勢いがすごい」漫画が手元にあれば人生だってなんかちょっといい感じになる気がしてこないだろうか。
綾と美緒の元へ新たに二人の仲間が加わり、せっかくだからみんなで大会に出てみよう!というのが2巻までの内容。
3巻では大会への準備、そして全国から集った猛者が予選で鎬を削る様子が描かれていくのだが・・・。
!?
80年代の関東からタイムスリップしたかのような顔をしたこの男の名は『gekido』。今大会で注目を集める強者の1人である。
まぁそれはいいとして、綾たちの秘密の勉強会から場面が一転、突然白目を剥いた男のゲーム実況を見せられると誰が予想できただろうか。お嬢様学校の女生徒しか映ってこなかったこの漫画で、何の前触れもなくいきなり金髪リーゼント、である。いきなりステーキも裸足で逃げ出す”いきなり”さ。
そしてこの「!?」の表現。2巻でもちょこちょこ出てきていたが、江島絵里先生が本格的にハマってしまったのかやたらめったら出てくる。これが対ありの作風にジャストフィットしてしまい、鬼に金棒、虎に翼、対ありに「!?」 もう恐れるものは何もない。
とにかく勢いがもの凄く、多少強引な展開もすべて「!?」で強行突破するその無理やりさにゲーゲー笑ってしまった。描いてるときも絶対楽しかっただろうな。
↑!?
“”を使ってまで彼が伝えたかったことはただ一つ「静かにしてください」。”耳を澄ませ”よう。
↑!?
てゃ先輩の初戦の相手。「荒らし時貞」で試合を支配する強敵だ。
さっきからどうみてもカタギじゃない人ばかり登場するんですが、格ゲーマーの人たちってこんな感じなんですか。というか強そうな名前で本当に強そうな人が来ることあるんだ。
↑!?
自分たちでも何を言ってるかわかってないようにも見えてじわじわくる。
後半では↑の二人、gekidoと禍腐餌悪霊の予選の戦いが描かれる。
ゲーセンで初めてgekidoに出会い、ボコボコにされ、彼をずっと目の敵にしてきた禍腐餌悪霊。「”むかつく”んだよ・・・? ”gekido”ォ・・・」湧き出る怒りをむき出しにして、ボタンに込める。バーチャルの世界でgekidoと殴り合う。
“昔からめちゃくちゃアイツが嫌いだった”の文脈に、「あっなんかこれ百合で見たことある!」と、嬉しくなってしまったのは私だけではないはず。嫌いと書いて大好きと読むのは常識ですね(感じ方には個人差があります)
そうそう、百合を忘れてはいけない。
この漫画の感想で何度も書いてきたこと。「あの子を格ゲーで打ち負かしたい」 これが対ありの芯であり、対ありの百合の形である。百合が女の間の関係性を意味するのなら、女が画面越しの女に大質量の感情(ただし殺意多め)をぶつける格ゲーはどう考えても百合なのである。
↑毎日美緒を倒すことだけを考えているからこそ、美緒が全力でこないと悔しい。相手との感情が釣り合ってないことに悩むめんどくさい百合みたいじゃない?
対ありは格ゲーをテーマにしながら、格ゲーを知らない層を排除せず誰でも面白さのコアを楽しめるようになっていることが本当にすごい。
私なんかぜんぜん格ゲー知らないので、格ゲー部分については「なんかすげー駆け引きをしている」「口が悪い」くらいの解像度で読んでいるが、話についていけないと思ったことはない。多分専門と一般のバランスはかなり意識して調整されているのだと思う。
「格ゲーわかんねー」「百合、知らねー」な人でも楽しめる格ゲー百合、対あり。なかなか新感覚の百合なので面白いですよ。
補足:「格ゲー百合」は私が勝手にそう呼んでいるだけで公式見解ではありません。