柚原もけ先生によるコミカライズ『安達としまむら』の3巻。
未だに新刊を読むたびに「うわヤバ・・・」と笑みがこぼれてしまう最高のコミカライズだが、3巻はさらに良かった。
アニメ放送終了後という今のタイミングが何より良くて、原作とアニメで通った展開をこれらとはまたちょっと違った視点で見られるのが面白い。
原作の雰囲気を漫画で再現しつつ(この空気感の作り込みが本当にすごい)、セリフや描写を取捨選択することで生まれる微妙な違い。これによって「知ってるけど知らない」安達としまむらが描かれる。懐かしいような新鮮なような不思議な体験。いやーおもしろい。
3巻ではアニメでも一番の盛り上がりを見せた(と思われる)バレンタイン編が贅沢に1巻まるまる使って描かれていく。
全身全霊で初めてのバレンタインに臨む安達、気付いたらなんか面倒ごとに巻き込まれていたしまむら、旧友との再会に希望を見出す樽見。三人のバレンタインが水面下で絡まりながら静かに緊張感を高めていく。
↑安達の下手くそ挨拶大好き委員会。「こ こんち」て。
↑ここのしまむらマジでウザそうでいいな。あと丁稚奉公なんて単語がスッと出てくるのすごくない?
↑樽見はどの媒体で見てもひたむきで健気で少し哀愁がある。彼女の悲しい顔は心に刺さる。
↑アニメの樽見は「ふぅ~~~~ん???」って感じでしたね。それにしてもしまむらの冷め具合よ。
↑安達の良さが詰まったライン。安達の大トロだ(これはアニメの感想でも言った)
巻末についている入間人間先生書き下ろしの小説がグサグサくる内容なので読もう。そして刺されよう。
樽見としまむらが”一番の友人”だったときの話が書かれているのだが、話しかけるのはいつも樽見ばかりで、しまむらから樽見へ声をかける描写がない。あまり自分から人と関わらないしまむらはそれでも一番仲が良かったつもりなのだが、樽見は自分だけが話しかける寂しさを感じていて、しまむらからすれば自分なんてたくさんの中の一人なのだろうと一人傷つく。
そんな昔のことを樽見が思い出し感傷に浸っているその後、彼女はしまむらと運命の再開を果たすわけだが、樽見への共感を高めに高めた上で、タイトルの『樽見としまむら0.00000000000000000』を突きつけて、二人の物語が始まる可能性は億が一にもないことを読者に理解させる。あまりにもひどすぎる。何故このタイミングでさらに樽見の解像度を上げるんですか。原作の10巻で出てくるんですか。
初めて樽見が出てきたときは「誰よこの女!!」と叫んだものだが、今は樽見への同情が止められない。いやだってしまむらとの再会だって、「たまたま中学校の時同じクラスだった人と会った」くらいの偶然かと思ってたけど、樽見の視点で見る限り運命の再会じゃんねこんなの。主人公じゃん樽見。
なんとか救われて欲しいが、しまむらにちょっかいかける感じだと安達が・・・。うーん、難しい。