最近すげー話題になってる、”島の百合”を摂取してみた【かいじゅう色の島】

最近すげー話題になってる、”島の百合”を摂取してみた【かいじゅう色の島】

かいじゅう色の島(1) (ドラゴンコミックスエイジ)

はっとりみつる先生の『かいじゅう色の島』。読んだ。

PRに力が入ってていろんなところで見かけたのと1巻でアニメPVが作られたということもあって、結構話題になっていた作品。

 

 

一言で表すなら『島の百合』。夏の日差しと潮の匂いと閉塞感と波乱の予感をギュっと詰め込んだ一冊。う~ん、面白い!!

何となくだけど、『君の名は。』とか『サマーウォーズ』が好きな人は多分好きだと思う。雰囲気が仕上がっているので。単発アニメ映画の冒頭15分くらいの『田舎の人々の生活が垂れ流しになってて、まだ何も起こってないんだけどそろそろ何か起こりそう』の感じが好きな人はハマる。私はそういうの好きです。

 

あらすじ

M県、知流島にて。

生まれてから一度も島を出たことがない少女、千川棔。友達がいない彼女の唯一の遊びは『かいじゅうさんの穴』と呼ばれる洞窟に行くこと。

ある日彼女がいつものように洞窟に向かうと、そこには島では見慣れない一人の女の子の姿が。不思議に思って棔が近づくと、驚いた彼女は持っていたスマホを海に落としてしまい、それを追いかけるように海に飛び込んでしまった!棔も慌てて海に飛び込むが、辺りは潮の流れが激しく、二人は海の底へと沈んでいってしまう。

謎の少女が目を覚ますと、二人とも何故か洞窟の入口に打ち上げられていて・・・。

 

孤島を舞台にしたちょっと不思議な百合。島で孤独に暮らす少女棔と、島にやってきた少女歩流夏が描くガールミーツガールの物語。

 

舞台となる知流島には『かいじゅうさん』という伝承が存在する。

その昔、島には『かいじゅうさん』と呼ばれる巨大な怪物が棲みついており、嵐が起こる度に暴れては村の人々を食い荒らしていたという。見かねた村人たちは若い娘を生贄にすることでかいじゅうさんの怒りを治めたのだとか。歩流夏も初めは半信半疑だったが、二人が『かいじゅうさんの穴』で溺れてからというものの、身の回りに不可思議な現象が起こり始める(ウザいクラスメイトが吹っ飛ばされたり、アワビの殻が宙に浮いたりする)。

 

『かいじゅうさん』についてはまだまだ謎だらけだ。

棔が幼い頃にかいじゅうさんを見たという話の真偽は如何に。二人が洞窟で感じたかいじゅうさんの気配は一体何?その昔生贄に捧げられた少女が棔に似ているのは何故?

棔と歩流夏のそばには常にかいじゅうさんの謎がある。田舎と古い伝承は最高に食べ合わせがいい。未開の地を舞台にすることで、謎めいた怪物は存在感を増す。

 

抜け出す百合っていいんだよな

この漫画、閉じた世界の設定がかなりいい。

インターネットもろくに通ってない田舎では近所付き合いが人間関係の全てになるわけだが、棔は周りから避けられていて、一緒に遊ぶ友達すらいない。さらに、田舎の学生の楽しみと言えば恋愛くらいしかないわけだが(偏見がすごい)、棔は恋愛をする気配もない。そして、そんな環境なのに島を出ようという意思もない。棔の世界はこの島の中で停滞しているわけだ。

そんな中、歩流夏という謎の少女が表れ、棔の日常がガラリと変わる。去年と同じ夏が来るはずだったのに、今年はトクベツな何かが起こりそうという予感。完全に終わっていた棔の世界がドクンドクンと脈動していく様子はとてもダイナミックでワクワクする。ガールミーツガールってこういうときに使いたい言葉よな。

これは完全に個人の感情なんだけど、私自身が田舎で育ち、尚且つ田舎があまり好きではないので、田舎の停滞感、閉塞感がグイグイ刺さる。なので、”閉じた世界から二人で抜け出す”みたいなシチュエーションは人一倍面白いと思っちゃうのである。

 

さらに夏の描写も素晴らしく、ページを開くと突き刺すような夏の日差しとキツメの潮の香りとまとわりつくような湿気が飛び出してくるんだからたまらん。この島はとにかく暑い。”島の夏”がそのまま漫画の中に詰め込まれているという感覚が近い。

↑常にセミが鳴き続けているが、そのうち意識にあがってこなくなるのがマジのセミらしいなと思った。

 

↑いつもぽやぽやしている棔。暑さでぐったりしていると喋るのがだるくなるので返事が適当になるよね、わかる。

 

一巻は長めの導入という感じで、先がかなり気になる展開。

掲載誌が季節誌ということで1巻が出るまでに2年半かかったらしいですが、全然待てます。それでは2023年夏にまた会いましょう。

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