現在世界中でトレンドの渦を巻き起こしている(私の観測している感じでは)、安達としまむらからついにアンソロが登場した。
アニメがバシバシ放送され、原作もコミカライズも出た今、アンソロを出すのは圧倒的正解で、ファンにとってもビジネス的にもWin-Winな戦略なのである。
果たして10人のクリエイターは安達としまむらをどう解釈する!!??
休日フィッシング / 柚原もけ
栄えあるトップバッターを務めるのは柚原もけ先生。ふむふむ、なるほどね~。ってコミカライズ担当のご本人やないかい!!アンソロって本人が出てくることあるんだ。
まぁそれはそれとして、普段原作ありきで描かれている柚原もけ先生が、フリースタイルでどんなあだしまをぶつけてくるのかは当然気になる。
↑みんなで釣りに行ったとさ
ほかの二人が疎ましいというわけじゃないけど、本音を言えばしまむらと二人きりがいいと言いたげな顔をした安達はいつも通り。結局、しまむらとの距離が縮められなかったけれども、それでもみんなと過ごせて楽しいなと思えた安達は「おっ」となるような新鮮さを感じた。
家でゲームばかりしている孫に「たまには外に行ってみたら?」と声をかけるおばあちゃんのような、もけ先生の慈愛に満ちた優しさを感じる作品。
あと5cmが遠くて / くもすずめ
珍しく音楽を聴く安達を見て、自分のお気に入りの曲を教えてあげるしまむら。イヤホンを分け合って二人で曲を聴くが、距離の近さに安達はドキドキしてしまう。
↑私生活が謎な安達がベッドに寝転んで漫画を読んでいる時点で既に面白い。「安達って漫画配信サイトで漫画読んで「おもしろい」とか思ったりするんだ・・・」という驚きがある。
↑安達はケーブルのイヤホンを使っているという圧倒的解釈一致が嬉しい。そうだよな、絶対ワイヤレスイヤホンとか買わないよな安達は。
イヤホンを片耳につけて同じ曲を聴くあだしま、あなたは近いと思いますかまだ遠いと思いますか。
安達ドッグ / 結野ちり
しまむらの部屋に遊びに来た安達。何故か犬耳としっぽを持っていたしまむらからの無言の圧力により、安達はそれらを身に着けることになるのだった。
確かにしまむらは安直なノリを安直に実行して安達を振り回すところがある。本当にしまむらはそういうところがある。
↑忠犬安達の完成。やることが結局いつもと変わっていないところが素晴らしい。
安達としまむらに主従という発想はなかったけれども、こうして主従としてみても全く違和感がないことに驚く。確かに犬と飼い主だわこれ。逆にどうして今まで気が付かなかった。たくさんの主従百合を生み出してきた結野ちり先生ならではの着眼点が光る。
安達の限界しりとり / 有馬
ゆるい四コマで描かれるのは、しまむらにしりとりで「す」責めされる安達。
↑そんなもん・・・「す」ってきたら・・・言いたくなっちゃうだろあの言葉を・・・!
「しりとりも勝つ」「理性も制御する」
「両方」やらなくっちゃあならないってのが「安達」のつらいところだな
しりとりを始めるときの「わたしから行きます」の敬語がほんとうに言いそうな質感があって笑ってしまった。
第二宇宙速度 / majoccoid
逆上がりができるようになりたいしまむら妹といつも通り能天気でふわふわなヤシロ。
マジコロイド先生の抜群に上手い絵で描かれたヤシロはどこまでも無邪気な美しさがあり、思わず天使という単語が脳をよぎる。天使ではなく宇宙人なのだけども。
ずっと思ってたのだけど、ヤシロってちょっと怖いんだよな。一人だけフィクションの世界に生きているからか、存在感が異質で。アニメの8話見ましたか?ヤシロ普通に宙に浮いてましたよね???誰も突っ込まなかったけども。
いい意味で常識に縛られない自由人、悪く言えば相互理解不可能な宇宙人。価値観が違い過ぎて人間にはやっちゃいけないことを何の悪気もなくやってしまいそうな感じがある。ヤシロがしまむら妹を連れていってしまう妄想を見たときに、ヤシロなら本編でもやりかねなさそうでちょっと怖いなと思った。
ひざまくら返し / 水崎弘明
水崎弘明先生はアニメでも登場したばかりの膝枕を掘り下げ。あれのシーンはよかった。
好きな物が何なのか、というか好みがそもそもあるのかわからないしまむらが「いい」といってくれた膝枕。安達がすがりたくなるのも当然なわけで。
↑お返しにと膝枕をしてあげるしまむら。「あの時は あんなに簡単にやってたのに」そうなんだよな~~~。めちゃめちゃふつーに膝枕されていたんだよなあの頃は。安達の変わりようとしまむらの変わらなさをビシビシと感じたお話。
とりかえっこ / 吉北ぽぷり
ひょんなことから日野を足の間に座らせることになったしまむらと、何故か永藤の足の間に座ることになった安達。
↑安達の感想。完全に語彙力を失っている。すご…て。「すごい」が出てこないほど思考が奪われている。
自分の足に日野を座らせているしまむらに安達がガーッとなるのはまぁわかるのだが、永藤の足に座る安達を見ている時のしまむらの表情が絶妙で、えっどういう感情それ??何を思ってる??と何もかもがわからなくなった。
また安達が百面相してらぁという表情でもあるが、意外に永藤の座り心地を気に入った安達をみて心に何かが湧いたような表情でもある。わからん。しゃべってくれ、しまむら。
グラビティ / ノッツ
しまむらの部屋に遊びに来た安達は一つの使命を帯びていた。しまむらの部屋から思い出として何かを持って帰りたいのだ。
↑クッションに余りがないか尋ねたり、唐突にマグカップを褒めたりと露骨に物色しだす安達の面の皮が厚すぎて笑ってしまった。人の部屋からクッション持って帰ろうとすることある?
上手な手のつなぎかた / 夏師
樽見がしまむらとの縁を何とか保とうと奔走するお話。
樽見としまむら、そういうのもあるのか。当然ある。何故ならアンソロジーだから。
この二人の繋がりは細い。樽見が自覚している通り、意識的に繋いでいなければどんどん薄くなって消えてしまう。初めて樽見が登場したときは、安達の立場が危うくなるんじゃないかと肝を冷やし、「あんまりしまむらに関わらないでくれ~」と願ったものだが、最近はその健気な努力に何だか「しまむらを攻略するのは大変だろうけど頑張れよ」と応援したくなる気持ちがある。
不思議の国の安達 / 華沢寛治
安達が目を覚ますとそこは『不思議の国のアリス』の世界。日野はうさぎ、永藤は帽子屋、ヤシロはチェシャ猫、当然しまむらは女王様。この世界のしまむらは少しわがままで・・・。
夢の中に登場する人物には自分にとって都合のいい、いわば理想が体現される。では安達の理想のしまむらとは何かというと、わがままを聞いてくれるのではなく、わがままを言ってくれる存在なのである。夢の中のしまむらは、安達に紅茶を入れさせ、ご褒美にキスをしてくれる。当然夢オチなのだが、自分から働きかけ続ける虚しさ、相手からも求められたいという願いはちゃんと現実として安達の中に存在するわけで、メルヘンだけどもちょっぴりビターな読後感。
というわけで安達としまむらアンソロジーでした。
安達としまむらに限らず、アンソロジーというものはいくつでも出してよく、出せば出すほどいいとされています。第二弾も是非お願いします。