GIRLFRIENDSの良さがわかるまで6年もかかってしまった

GIRLFRIENDSの良さがわかるまで6年もかかってしまった

最近、森永みるく先生の『GIRLFRIENDS』を読み直した。

 

GIRLFRIENDSは女子高生の初々しくも甘酸っぱい青春を描いた不朽の名作で、作者の森永みるく先生は百合の黎明期から活動されてきたいわば百合界のレジェンドとも呼ばれる存在である。

おススメ百合作品では真っ先に挙げられる、いわば殿堂入りのような作品なのだが、最近だとメジャーすぎる故に一周回って逆に名前が挙がってこない。おすすめロボットアニメ教えて!という質問にガンダムが挙がってこない感じといえばわかるだろうか。

実はGIRLFRIENDSを読むのは二回目だ。

昔、本格的に百合にはまり始めて少し経った頃に、ここらで一度有名どころを抑えておこうというつもりで読んだのだが、凝った設定が好きだった自分には直球すぎる百合はあまり刺さらなかった。

同様に有名どころとされているささめきこと、青い花も読んだ。惹きこまれたし、感動もしたが刺さったかと言われると何か違う気がした。自分にとって王道の百合はまだ早すぎた気がした。

それからしばらく経ったが、変化球の百合が好きなのは今もあまり変わっていない。

ただ、たくさんの百合に触れていく中で、変化球もそうでないのもそれなりに量を読んできた。そして様々なジャンルを楽しむための感受性も前より培われてきた(気がする)。

今ならわかるはずだ。王道の百合の良さが。そういう思いが湧き上がってきたとき、一番最初に頭に浮かんだのがGIRLFRIENDSだったのだ。

 

GirlFriendsのストーリーは実に直球だ。地味目な女子高生まりはふとしたきっかけで、明るくてオシャレなクラスメイトあっこと親しくなる。そして二人は仲を深めていくうちに自らに芽生えた恋心を自覚していく。

主役の二人にフォーカスした、一本道で非常にわかりやすいストーリーだ。

シンプルな構成だからこそ、二人の関係性を心ゆくまで楽しむことができるし、彼女たちのドキドキや苦しさといったみずみずしい感情も引き立つ。次々と展開されていく多感な少女達の初恋。その繊細な心情表現はさすがレジェンドといわざるを得ない技巧だ。

 

森永みるく先生はストーリーで勝負する漫画家だ。

女の子同士の恋愛というストレートなテーマを丁寧にしっかりと。しかし、決して冗長ではなく。緩急のついた展開は最終話まで勢いが衰えることはない。読み始めてしまえばもう止まらない。

そこには奇抜な設定に頼らない、王道の魅力がある。

 

 

王道って一体なんだろう。

すでに世に出回っている正攻法という意味なら定石という言葉で足りるはずだ。王という言葉を使うからには誰もが通れる道ではない感じがする。

ジャンルで定番となっている話を扱う場合、展開の意外性に頼ることができない。故に何となくその後の道筋が予想できてしまう。結果、読者のハードルはかなり上がることになる。

その上がりきったハードルを、誤魔化すことなく、下からくぐることもなく、真正面から実力で飛び越えてみせるのが王道なのではないか。

 

当然それは簡単なことではない。

ここぞというシーンで魅せるための画力の高さ、読者の心を揺さぶり焚き付ける話作り、思わず入れ込んでしまう魅力的なキャラクター、緻密に計算された展開。コマ割りといった基礎的な技術も必要となるだろう。

王道とは誰もが入れるスタンダードな道のりではない。確かな実力に裏打ちされた者が進むことができる難関な道のりなのだ。

 

最近の百合漫画は変化球が多い。しかしそれはジャンルが成長した証とも言える。

隙間を埋める作品がたくさん出てくるようになったのも、王道の作品達が道を切り開いてきたからこそ。間違いなく『GIRLFRIENDS』は道を作ってきた開拓者のような作品の一つであると思う。

 

 

では最後によかったシーンをいくつか挙げて終わりにします。

彼氏と夏祭りに行ったあと、あっこの家に泊まることになったまり。これは寝る前にまりが打っていたメールの相手が彼氏だとわかったときのリアクション。

自分から聞いておいて、「ねむ~~~」である。もはや返事にすらなっていない。そんな急に眠くなることある?

あまりにも不自然すぎる失望の仕方が可愛らしすぎる。

 

一つの大きな壁を共に乗り越えた二人。多幸感に浸る私を不穏なナレーションが煽る。

一息ついたかと思いきやこの緊張感。こんなところで読むのをやめる方が無理な話だ。

あまりにも展開の魅せ方がうますぎる。

 

ヴオアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!!!!!!!!!!

 

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