ギャグ百合にしか描けないシリアス百合だってあるさ【スクールゾーン 2巻】

ギャグ百合にしか描けないシリアス百合だってあるさ【スクールゾーン 2巻】

スクールゾーン 2 (BLADE COMICS pixivシリーズ)

ニンギヤウ先生の『スクールゾーン』2巻です。

 

 

ところで帯に書いてある『百合覚悟』の意味が全く分からなくてわろってる。 何を言っているかはわからないがとにかくすごい勢いだ。

 

1巻の『百合注意』はまだわかる。 ツイッターとかでたまーーに見るやつ。 絵師が百合絵を投下するときの「百合が地雷な人は注意してね!!」という注意勧告だ。

百合覚悟って何なんだ。 百合だから覚悟しろってことか。 いや、百合だから覚悟しろって何なんだ。

この漫画のそういうところ、とても好き。

 

以下感想

 

昼休み。 ウィンクができるかできないかというクッソくだらない理由で争うJK達。

謎の奇声と頭悪そうなポーズと萎びたアホ毛、そして澄んでいるのか濁っているのかよくわからん目。 これらが合わさって奇跡的な面白さを発揮している。 「ほ、ほよょ?」ってどんなリアクションだよ。

この漫画は顔芸にメリハリが効いている。 中途半端にかわいさを残した変顔みたいな守りが存在しない。 点が欲しいというときにしっかり点を取ってくれる、そういう信頼感がある。

顔芸が面白い百合漫画は良い百合漫画だ。

そしてこの話は特にオチもなく終わるのだがそこもまたいい。 何故なら日常会話というものはオチがないからだ。

何もない終わり方がくだらない日常のリアリティを醸し出す。

 

 

ゲームセンターでUFOキャッチャーに挑戦する藤。 だが全く取れない。

店がセコいことをしているわけでもなくただ単に藤の腕がへぼすぎるというだけなのだが、ムキになってしまった彼女はさらなる資金を投入しさらに引けなくなる。 最終的にその日に藤がつぎ込んだ金額はなんと8万

 

そして藤の死闘は5日目に突入する。 そんな藤を見かねた美人の店員が目の前でぬいぐるみを取って優しい言葉と共に藤にあげるのだが・・・。

「毎日来て頑張ってんの見てた 取れてよかったね」

恋の始まりの音が聞こえてきそうなこんなセリフから何も始まらないのがこの漫画である。

急な名乗りで盛大に笑ってしまった。 好敵手と認めた相手に対する宣戦布告じゃん。

 

藤まつりという人物は本当に面白い。

お姉さんの善性を目の当たりにした藤は自らの善について考え直すところがあったのか、お姉さんと再会するなり自慢げな顔で「一日一善ですよ!!わかりますか!?」と発し善性でマウントを取りに行く。

いや知ってるでしょうよ。

そんな一期一会並みの知名度を誇る四字熟語でそんな得意げな顔されても。 『一日一善』とか小学生でも知ってるわ。 ご丁寧に言葉の解説まで添えて。

一日一善みたいなキラキラした言葉って人に言うの気恥ずかしくなると思うんだけど、むしろ誇らしげに言ってしまうところが藤まつりである。本当に面白い。

誰がどう見ても善に勤しむ自分に酔っているとわかるのだが、このように思考と行動と表情がわかりやすくリンクしているかと思えばお姉さんに対する急な名乗りのように頭の中で論理の飛躍が行われて意味の分からない発言をしたりと読めるようで全然行動が読めない。 面白さの化け物か。

 

毎日面白くもないバイトで疲弊するお姉さんの前にこんな人間が現れたら一体どうなるのか。 そりゃあもう百合が始まるに決まっている。

現状の関係性では藤はお姉さんの人間性にゾッコン、崇拝にも似た感情を向けている。 対するお姉さんは灰色の毎日を笑いの急降下爆撃で吹き飛ばして現れた藤が面白くてしょうがないといった状況。

今はまだ藤の一方的な感情のように見える。

しかし。 どこに行っても面白い人生を歩める藤と違って、お姉さんは多分そうではない。 彼女にとって藤は奇跡の出会いなのである。 圧倒的なアドバンテージを握っているのは藤なのだ。

今は面白い子と知り合えたくらいの感覚だけどこの先藤の存在はどんどん大きくなっていくはず。

 

 

後半には礼と契の過去の話について語られる。

この漫画では愛については語られるが恋についてはほとんど語られなかった。 礼が契を好きなのは当たり前のことでわざわざ語ることではないと思っていたし、そもそもギャグ百合だからそういうものだろうと思っていたのでいきなりの真面目な百合には驚いた。

二人の間に隠されていた関係。 それは核心に触れることを恐れるあまり真面目な話ができないという恐ろしいほど繊細な距離感。 普段ふざけてばかりの二人の関係とギャグマンガの先入観を逆手に取った見事なシリアス展開。

閉塞感とはまるで無縁の学校生活からは考えられないほど息の詰まった礼の孤独。 礼が一人になることで二人の百合は始まる。

ずるい。 こんなの心に刺さらないわけがない。

こんな場面を見せられたらこの二人を見る目が変わってしまう。 二人の何気ない日常を見るたびに礼が犠牲にした”好き”が頭をよぎるようになる。 しょうもないやり取りの裏にもきっと膨大な感情が・・・

と思うじゃん?

 

これがスクールゾーンという漫画です。

 

 

 

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