岩見樹代子先生の新連載『ルミナス=ブルー』の1巻です。
岩見樹代子先生は以前百合短編集『透明な薄い水色に』を出されていて、その人間関係の動かし方や繊細な画風がとても好きだったので楽しみにしていました!
↓そのときの感想
三角関係の良さは修羅場抜きじゃ語れないでしょ【透明な薄い水色に】
その後この作品の連載が始まるまで間が空いてましたがまさか半年間もボツりまくっているとは。 恐ろしや。
ただしかし、その内容はかかった時間以上の素晴らしいクオリティとなっております。
以下感想
県立青島高校へ新たに転校してきた少女、垂水光。
彼女の何よりも好きな物、それは写真を撮ること。 それも通学中に写真の撮りすぎで転校初日から遅刻してしまうほどの無類の写真好きだった。
青高の写真部に入部することをとても楽しみにしていた光。 何故ならそこには何度も賞を取るほど凄腕の憧れの先輩がいるのだ。
しかし担任の口から告げられたのは、写真部は既に廃部になったという衝撃の事実だった。
先輩本人から話を聞くと写真部には新入部員が全く来ず部員は先輩ただ一人しかいない上に最近はもうあまり写真を撮っていないという。
そこで光は今度は一緒に賞を取ることを提案。
二人とも受賞した実績があれば写真部の復活の可能性も見えてくる。 一致団結した二人は部の再興を目指して賞への応募を決める。
転校生である光に話しかけてきた二人のクラスメイトがいた。
派手な外見で人懐っこい雨音と落ち着きがあり実はモデルをやっている寧々。
何気なく二人を撮った写真がとても良かったことから、光は賞に応募するための写真として雨音と寧々の”二人”を撮りたいとお願いする。
ノリノリだった雨音と違い初めは嫌がっていた寧々だったがモデルのしてのチャンスということもありしぶしぶ了承する。
いざ撮影、となるが二人の間には不自然な距離。
そこで小道具としてアイスを用意し雨音に持たせた光。
夏の気温で溶けて雨音の腕を滴っていくアイス。 ハンカチを取り出し雨音の手を拭く寧々。 二人の距離は縮まっていきお互い鼻が触れる程の距離に。
こうして取った光の写真の完成度はすさまじく、先輩からもお褒めの言葉を頂けるほどの出来に。
しかし、ここでさらに先輩の口から衝撃的な発言が飛び出す。
「二人、中学のころ つき合ってたんだよ」
なんと雨音と寧々は元カノ同士の関係だったのだ。
いやもうびっくりよ。
雨音と寧々を見たときに仲がいいようで微妙に距離があるのが気になってたけど見た目からしてギャルと清楚じゃん? 心を開き切れてない寧々に雨音がギャルお得意の体当たりコミュニケーションで距離を縮めてる最中かな?みたいな。
この辺は完全にcitrusで形成された固定観念に縛られてた。
でも中学から一緒なのに仲良くなるまでそんなに時間かかる?という違和感もあったけどまさか元カノの概念だとは・・・。 思わずもう一回読み返してしまった。
「友達じゃんわたしたち」の言葉はこの距離にまでたどり着いたという意味ではなく、この距離でなんとか踏みとどまっているという意味だったとは。
あまりの話の構成の巧みさに唸ってしまいました。
以前岩見樹代子先生が描かれた短編集『透明な薄い水色に』でも思ったんだけど、関係性の変化をドラマチックに表現するのがすごく上手いんですよ。
キャラクターが全力で悩み、葛藤し動く。 刻一刻と変わっていく少女間の感情。
関係性が変化すればそれを取り巻く女の子たちの心情がさらに動く。
キャラクターが全力で“生きている”というのが伝わってくる。
だから不穏な空気になれば心配になってハラハラするし、幸せそうなシーンだとこちらまで嬉しくなってくる。
この作品が面白いのは人間関係の変化という話の構成の上手さと生き生きしたキャラクターという要素がずば抜けているから。 この二つの相乗効果によってめちゃくちゃ読ませてくる。 もちろんどちらが欠けていてもダメ。
今の段階ではまだ物語はゆっくりとしか動き出していないので、もう戻れなくなるほどの勢いがつくときがすごく楽しみ。 例えるなら今はジェットコースターで坂をカタンカタンと静かに昇っている段階ですかね。
特に先輩がどう動きだすかがめちゃくちゃ気になる。 雨音と寧々が別れた原因に関わっているに違いないし、今の状況を快く思っていないので乱入は必然。 かき回してくれよ~~頼むぜ~~~~。
自分、修羅場大好きっスから先輩には期待してるっす。
あと雨音と寧々の中学生時代の話聞きた過ぎない????
中学生カップルって???? あんなに色んなコトしたって何??????
想像力が貧弱すぎて全くわからねぇ未知の世界になってる。 このブラックボックスに私は大いに期待したい。
というわけで『ルミナス=ブルー』1巻でした!
今後の展開がとても楽しみなところですが、なんと打ち切りのピンチにあるらしいです。
努めて明るく悲しいお願いを真剣にします…!
…無力すぎて、申し訳ないです pic.twitter.com/0JwTk5Lgnp— 岩見樹代子 (@okome103) April 6, 2019
ええ・・・?? 自分の観測してる感じだと誰もが絶賛しててみんな買ったものだと思ってたけど・・・?? それでもピンチだったの・・・??
同じ時期に連載が始まった『スカーレット』や『イケメンすぎです紫葵先パイ!』も同じくピンチの状況だとか。 信じられない・・・。
売り方とか宣伝とかいろいろな要因があるんでしょうけど、読む側の立場としてはアニメ化ラッシュやら新作の大量やらアンソロブームとかで、てっきり百合界隈は今イケイケでぶちあがっていると思っていたけど実はそうではなかったというのが結構ショックでした。
輪の中にいるとわからないけど、本来は狭いジャンルなんですよね。 今回の件でいろいろ気づかされました。
とりあえずその辺の話は置いておくとして、ほんとはこんなこと言いたくないんだろうけど作家さんがわざわざこういうことを言ってくれたのです。 作品が続いて欲しいという気持ちは作家も読者も一緒なはず。
応援しましょう。
気になっている方は買いましょう。 完結したら読もうと思ってたのに打ち切りになってしまったを後から言うのは無しです。
既に持っている人は無理に複数買いをする必要はないと思いますが、感想を呟いて紹介したりAmazonのレビューを書いたりすることはさらに多くの人達に作品を伝えるチャンスです。
あんまりこういう裏の世知辛いところについては知りたくないという気持ちもあるかもしれないですけど、連載が終了した後に言われたときの無力感に比べたらまだ何か自分で行動できるだけ百億倍マシだと思います。
最近の恵まれ過ぎた環境だと何もしなくても勝手に百合が入ってくるので、つい平和ボケ(?)しちゃいそうになりますけどほんとうに好きな作品があるのだったらやっぱり自分で動くべきなんだなと痛感しました。 あとから後悔するのは自分なので。
応援できるものは応援できるうちに応援しよう!!
最後まで読んでいただきありがとうございました!
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