施川ユウキ先生の『バーナード嬢曰く。』です。 現在3巻まで刊行中。
ただいまアニメ放映中ですね。 原作は昔なにかでチラっと読んで「この漫画面白いなー」と思った程度にしか知りませんでしたが、言われてるじゃないですか、すごく。
原作は百合だの二巻から百合漫画になるだの。
前読んだときはそんな感じしなかったけどなーと思いつつ、気になったので原作を買ってみました。
自分の結論含めて以下紹介。
だいたいのあらすじ
いかに本を読まずして読書家っぽい雰囲気を出せるかに命をかけている、バーナード嬢こと町田さわこ、SFを語り出したら止まらない文学少女神林、流行本をブームが去ったあとに読むのが好きというシニカルな遠藤、真面目な図書委員の長谷川が図書館の隅っこで本について語り合う。
だいたいそんな感じ。
大抵はお互いの本に対する価値観について話したり、本好きあるあるだったり、神林がSFについて吠えたり、町田さわこが適当なことを言うので神林が殴ったりとそんな漫画です。
何せ登場人物が本についてしか語っていないので、本好きしか楽しめないのかと言われるとぜーんぜんそんなことはなかったです。
題材もSF、とにかく難しそうな本、絵本やKAGEROUまで様々で、そのほとんどが読んだことのない本ばかりでしたが全くの無問題。
中学生以来本を読むという文化を失ってしまった自分でも、読んでいておおいに面白かったです。というか、主人公が読んだこともない本について熱く語る漫画ですし。
というかこの漫画の面白いところは本についての雑学とかではなく、話の中でキャラクター達の本好きとしての哲学が垣間見えるところだと思う。
とにかく町田さわこも神林も言うことが鋭い。
理屈っぽい人間の洞察というものはときに物凄い説得力があって、思いもしなかった斬新な発想もあれば、当たり前すぎて考えもしなかったことを改めて言葉にされてハッとするときもある。
本は 読みたいと思ったときに読まなくてはならない
その機会を逃がし「いつか読むリスト」に加えられた本は
時間をかけて「読まなくてもいいかもリスト」に移り
やがて忘れてしまうのだ
これとかあるあるすぎてね・・・。 本に限らず全てのものに対して言えると思う。
アマゾンの欲しいものリストとか、入れた瞬間に「欲しいっちゃあ欲しいけど」リストになるしな・・・。
この漫画のあるあるは本好きじゃなくても「ありそー」と思ってしまう。その趣味に対する姿勢に共感するものがあるんだよな。
町田さわこが大好きなさまぁ~ずの本について一生懸命語ってるときの、神林のこのセリフとかほんとそう思う。
目をキラキラさせながら純粋な気持ちで語られるときって、やっぱり聞いててもその嬉しさが伝わってくるからなんか楽しいし、もっとその話を続けたくなる。
逆にこんなマイナーな知識知ってる自分異端?アピールむんむんの話とかは早めに話題そらしたくなるし、頼むからツイッターとかでやってくれ~と思う。神林はよくこの手のオタク喋りをやって周りを引かせてしまうのだが、とても他人事とは思えない部分があってなかなか目を逸らせない。
あと周りの目を意識してしまい「ドグラマグラ」を読むのを躊躇する町田さわこに神林がキレるシーンとかも大好き。
神林は言うことに説得力もあるし、なにより疾走感もあるので、ガーっと言い終わった後に「うーん、確かにそうだよなぁ」と思わせてしまうような圧がある。
一度始まってしまったら体力尽きるまでまくし立てる神林の喋りって、本当に自分が好きな物に対してじゃないとできないんだよね。自分の中で確固たる世界観が出来上がっている証だから。
『バーナード嬢曰く。』での町田さわこの純粋に好きなものを好きという気持ちや、神林の自分の分野に関しては絶対に譲らないところとか、本という枠を超えて、自分の好きな物に対する姿勢についてとても考えさせられました。
趣味とどう向き合うかって自分の中で割と大きいテーマなんですよね。
オタクと言わずとも、熱中している趣味を持っている人なら何か感じさせるものがあると思います。
あと絵はあまり上手でないです。 本編も全て表紙に書いてある通りの画風です。
手なんてお弁当に入ってる緑のギザギザみたいな描かれ方してることとかしょっちゅうだし。
でもあえて崩してると思うんだよね。
あえて崩すことによってステレオタイプの表情じゃなくて、その時しかできない表情を描いているのだと思う(思いたい)。
この神林の表情とか一見崩れてるけどなんとか取り繕って冷静を装おうとしているけど見るからにドギマギして焦っている様子がよくわかると思いませんか!
そしてこれは・・・誰が何と言おうと言わせてもらいますが・・・この漫画は・・・
この『バーナード嬢曰く。』は・・・・・・紛うことなき百合漫画です!
もしこの『バーナード嬢曰く。』が百合漫画でないというのなら、ただ暇な学生が図書館でたむろするだけの漫画だと言うのなら・・・!
手紙に書いてしまった好きの言葉に過剰に反応して、どちらかといえば好ましく思うに一生懸命書き替えるシーンなんて不要!
秋の夕暮れに、BGMが止まってしまうような下校中の1シーンだって、
物憂げな表情の少女の手を取るシーンだって不要なはずじゃないか!
本のうんちくもあるあるも一回も出ず、町田さわこと神林がまじな喧嘩をするだけの回なんて必要ないじゃないか!
百合じゃん。 とんだ百合漫画ですよこれは。
他にも本の栞のことだとわかっていても、しおりを考えるのが好きと言われて落ち着かなくなったりとか、急に電話がかかってきて照れてしまうとことか言い出したらキリがないくらい証拠はあります。
一瞬にして漫画のジャンルを変えてくるからね。
こうやって思わぬところから急に百合が出てくると、身構えてなかったがら空きのボディーにすごい入ってくるからまるでむちゃくちゃよく効く。 もはや暗殺。
でも1巻では全然百合の波動は感じないんだよね。
2巻から急にくる。
この一般の漫画に百合を隠す感じ、隠れキリシタンかよと思ってしまったわ。
もしかしたら施川ユウキ先生は元々百合が描きたかったけど編集部に許されなかったから、全然関係ない漫画を描くと思わせてじつはこっそり百合を描いているのでは?
何はともあれ自分はこれからもこの漫画を百合として読んでいきます。
遠藤君は全然嫌いじゃないし、むしろ割と好感を覚える方だけど、あんまり二人の間をうろちょろされると困るので適当に長谷川さんとくっついてください。
あと多分放送前に言われ尽されてると思うけど、原作読んで改めてアニメのキービジュアル見ると「誰?」ってなるよね。
「としょぶ!」とかいうタイトルでキララ系列で連載されてそう。
というわけで『バーナード嬢曰く。』でした。
いやーまさかこんなところに百合があるとは。 棚から百合の気分です。
上でも言いましたがこれからも百合漫画としてこの『バーナード嬢曰く。』を読んでいこうと思います。 ちゃんと百合漫画の棚にもしまいます。
最後まで読んでいただきありがとうございました!