近藤笑真先生の『あーとかうーしか言えない』です。
自分がわたモテ以外で唯一連載を追っているウェブ漫画。
何がきっかけだったか忘れましたけど独特なタイトルに惹かれて読んでみたらなんかすごいハマっちゃいました。 総合タワーリシチの二人といい、あのキスの白黒といい、自分は天才という要素にとても弱いのではないかと思えてきた。
ちなみにこの漫画、裏サンデーで連載されているのでアプリがあれば無料で読めます。
気になった方はぜひ。
以下紹介
タナカカツミ、新人編集部員。
漫画の持つキャラクターの魅力が何よりも好きだった彼女は新人編集者として漫画界へ踏み出すことになるのだが、配属された先はなんと成人漫画の編集部だった。
一般の漫画とは違う成人漫画業界特有のあれこれに困惑しながらも編集者としての仕事をこなすタナカの元へ一本の電話がかかってくる。
「あー」
「うー」
受話器から聞こえてくるのは若そうな女の声。 しかしタナカが話しかけても返ってくるのは曖昧な言葉だけだった。
一見いたずらとしか思えないこの電話。 もしかしたら漫画の持ち込みかもしれないと思ったタナカは怪しみながらも一応会社に来るように伝える。
そして受付からの内線。 呼び出された一階で彼女を待っていたのは大きなカバンを持った女の子だった。
戸田聖子、23歳。 髪はボサボサで身なりには無頓着。
おまけに言葉をしゃべることが大の苦手で、返事はほとんど「あー」。
タナカはセイコの持ってきた漫画を読み始める。
ページ数が多い割に行為のページは少なく、はっきり言って成人漫画的ではなかった。 が、しかし魅力的な画風、突きつけるようなテーマとしっかりしたストーリー性、何よりその漫画には感情を揺さぶる力があった。
そしてセイコの漫画は月例賞で準入選を獲得。 編集長からもその才能を見出され即デビューが決定し、タナカが担当としてつくことに。
行く当ても生活能力もなかったセイコはタナカのマンションに転がり込み、新人編集者と新人漫画家の二人一組の生活が始まるのだった。
・知られざる成人漫画の世界
あまり言葉を喋れない天才肌の漫画家と仕事に関してはまだ成長中の新人編集者の二人を描いた作品。
特徴的なのは二人が扱っているのが成人漫画だということ。
漫画家を題材にした漫画は数多くあれど主人公が成人漫画家というのはあまり見ない・・・気がする。
しかもこれがただの設定として扱われているわけではなく、彼女らの連載誌であるX+Cの事務所を中心に二人の成人漫画家としての活動を通じて話が展開されていく。
もちろん業界を取り巻く環境の話とかも出てくるし、成人漫画を語る上では避けては通れない実用性みたいな結構生々しい内容にもがっつり触れていく。 のでそういった話が苦手な方はだめかもしれない。
そもそも百合好きの層と成人漫画を買う層がどれだけ被っているのかというと何とも微妙なところ。 自分も買わないなぁ・・・。
でも一般受けした当たり障りのない作品を描きたいなら最初から普通の漫画家の設定にすれば良かったんですよ。
そこをあえて扱いにくい成人漫画を持ってくるってことは、そのテーマでしかかけないような話があるのでしょう。
いまいち自分の仕事に居場所を見つけられないタナカ、天才的な才能を持つセイコ、そして成人漫画。 この三つの歯車がガチッとかみ合ったとき、今までに見たことないような唯一無二の物語が繰り広げられるんじゃないか。 この作品はそんな強い可能性を秘めているように感じます。
そして百合的な見どころを言えば・・・
同棲百合とバディ百合が一緒に楽しめるので一粒で二度美味しい!!!!!!!!!!
生活力皆無の野生児と家事力バリバリのしっかりさん。 もはや同棲するために生まれてきたんじゃないかと思うほどの最高の取り合わせ。 お互いがお互いの百合力を最大にまで引き上げる。
同棲までのスピード感も凄かった。
「なら今日は私の家に来ませんか?」
↓
「帰ろうって気がないみたいなんですよね。」
そんな簡単に同棲始まる??? これだけしっかり性格の凸凹がかみ合ってしまったらそりゃあねぇ。
というか二人の生活力がタナカに偏りすぎているので、家での生活はもはやペットと飼い主の関係。
セイコは一人では生きていけなさそうなので今の生活の必要性は言わずもがなだけど、世話を焼くタナカもまんざらではなさそうなのも打点高いっすね。
取材と称した遊園地デートなんかもしちゃって二人の生活をエンジョイしまくりで百合的な見どころは多い。
個人的にはセイコが家出ネタするのが楽しみです。 満喫すら泊まれなくて公園の遊具の中でうずくまってそう。 早くケンカしないかな~。
家ではぐうたらとしっかり者の二人でも仕事では立場が逆転。
漫画のことになると職人肌になるセイコ。 自分が納得のいく出来になるまで妥協は許されない。
家では犬のようだったセイコですが漫画に向き合うときはまるでオオカミのよう。
気軽に口を出したタナカがあまりの真剣さに戦慄させられるほど。
家と職場で全く異なる関係性。 このどでかいギャップがたまらない。
とはいえ仕事に関しては良い作品を作り上げるためにタナカも全力。
成人漫画という舞台自体は珍しいものの、新人同士が二人三脚で力を合わせながら業界を駆け上がっていく様はすごく王道的なストーリーだ。 そして王道ゆえにとても熱い。
一見イロモノっぽいけど芯は真面目というギャップがこの漫画の魅力的なところでもある。
あとストーリーでおおっとなったのは何といっても同誌のエースであるNORuSH先生とのアンケート勝負に発展したシーン。
アンケートでも上位を勝ち取るほどの実力を持つNORush、負けたら引退という背水の陣ともいえる状況に今まで温存していたとっておきのネタを引っ提げて勝負に臨む。
対するセイコは当初百合ネタで話を進めていたが、百合は人気が出ないということで編集長から待ったがかかってしまう。
勝つために百合を捨てるか、もしくは負け覚悟で百合を通すかというタナカの問いにセイコはこう答える。
くぅ~~~~~痺れるね~~~~~~。 百合は人気が~~云々みたいな話はこの界隈にいると嫌でも耳に入ってくるからこそ、ここまでビシッと言ってくれると勇気が湧いてくる。
百合で勝つ。 一度は口に出したい日本語。
というかこの百合で勝負するという話を1巻に入るように早い段階で持ってきたのは百合好きに対するアピールだと思うんですよね。
百合の要素がある作品って最初から百合!!!!!っていっておかないと百合好きに知られることなく連載が終わってしまうときがあるのですよ・・・。
明確な百合漫画じゃない漫画が途中から百合好きに知られるのってなかなか難しい。 わざわざあるのかないのかわからない漫画を読まなくても世間にはたくさん百合の連載があってそっちの方が手を出しやすいからね。
だからこの漫画もできるだけ早く百合好きに知られて欲しいなぁと思います。
というわけで『あーとかうーしか言えない』でした!
題材が題材なので人を選ぶとは思いますけど、個人的にはすごくおもしろかった。
百合として読んでも全然問題ないと思います。
まぁ漫画の紹介や帯等に一言も百合とは書いてないので自分の思っていた展開にならなくてもそれは自己責任になりますが、信頼してもいいかなと思いました。
だってタナカが百合の資料として持ってきた漫画に『私がモテないのはどう考えてもお前らが悪い!』が入ってたんですよ!! 信じるしかないでしょ!!!
最後まで読んでいただきありがとうございました!