磯谷友紀先生の『あかねのハネ』1巻です。
ひらり、コミックスの短編集『さよならむつきちゃん』がとても好みだったので、『あかねのハネ』も読んでみようと思っていたのですがすっかり忘れてました。
最近ふと思い出して買ってみたのですが、とても面白く夢中になって読み終わりました。元サッカー少女がバドミントンに入門し、プレイヤーとしてめきめき成長していく疾走感とか、それぞれの事情を抱えてコートに立つ少女たちの思いとか、スポーツ漫画としても百合漫画としてもかなり良かった!!!!
以下感想
・だいたいのあらすじ
深山あかね、サッカー部。勝つことが何よりも大好きで、部内では持ち前の運動神経を活かし大活躍を見せていた。
彼女は仲間たちと共に青春の汗を流し、サッカー少女としてさらなる高みを目指していく。 はずだった。
気持ちを切り替え、転校先のサッカー部でレギュラーになることを期待するあかねだが・・・。
サッカー強豪校を受験したものの・・・ことごとくスベる。
そしてやっとのことで高校が決まったあかねをさらなる悲劇が襲う。なんと新しい学校にはなんとサッカー部が存在しないのだった。
代わりに入りたい部活も決まらず、ゲームに明け暮れるあかね。
そんなある日、バドミントン部の坊薗汐里コーチは身体測定の反復横跳びで驚異の数字を叩き出した彼女に目をつける。
バドミントンの経験はほとんどないあかねだったが、誘われるがままバド部の見学に。
そこで目にしたものは、真剣にバドミントンをするクラスメート鈴木佐羽子の姿だった。
普段の地味で引っ込み思案な性格からは想像もできないほど華麗なプレーに思わず見とれるあかね。
コーチの提案であかねと佐羽子でペアを組みダブルスの試合をさせられることに。
ラケットの握り方を教えてもらったばかりのあかねと組まされることに猛反発する佐羽子。
「何もしなくていいから!」と言い放つと全ての打球を一人で返していく。
とはいえ実質2対1の状況ではさすがに分が悪く、試合には負けてしまう。
しかし、佐羽子ですら取り逃してしまったスマッシュに瞬時に反応したあかねを見たコーチはニヤリと笑うのだった。
・スポーツする喜び
中学時代に片道6kmの通学路で鍛えられた足腰、サッカーで培った体力、落ちる箸にすら瞬時に反応できる反射神経。
あかねは一言でいうとポテンシャルお化け。
その才能の片鱗が日常でもにじみ出てちゃってます。
しかしどんなにポテンシャルを持ったとしても、ラケットも握ったことのないズブの素人が実践で鍛え上げられてきた経験者に通用するほどスポーツの世界は甘くない。 スポーツは経験値がものを言うシビアな世界なのだ。
加えて三ノ宮高校は関東大会で優勝するほどの強豪校。
経験者しかいないのは当たり前。 一番遅い人でも12歳からバドミントンを始めているという実力者揃い。
バドミントンの経験がある人ですらそのレベルの高さに選手を諦め、マネージャーを希望するほど。 初心者はあかね一人のみ。
当然、手も足も出ずボコボコに。 というよりサーブのフォームから練習しているような素人はそもそも試合にならない。
だけどあかねは全く打ちひしがれない。
というよりむしろ楽しんでしまっている。
主人公あかねのスポーツの謳歌っぷりが見ていて気持ちがいいんですよ。
落ちている羽根を拾い上げられなかったり、試合で一点も取れなかったりと何かできないことがあると、綺麗な悔しがり方をするんだよね。
本当にスポーツが好きなんだなって悔しさから伝わってくる。
その悔しさは負の感情ではなくて、成長につながる正の感情。
あかねを見ていると
「新たにできることが増えていく喜び」「自分の持っていた技術にさらに磨きをかける喜び」
といったスポーツにおける成長する喜びを味わうことができる。
これはある意味漫画でしか味わえないと思った。
自分だったらサーブ入らなかったらイライラして辞めちゃうもん。
絶対入れられるようになってやるっていう向上心ないもん。
スポーツへの姿勢だけでなく、周りを気にしないさっぱりした性格や友達思いのところなど非常に好感が持てる魅力的な主人公だなと思いました。
ひそかな自主練っていいよね。
努力の中でも影での努力が一番好き。
密かに下準備を行う感じがワクワクする。
バドミントンはポテンシャルだけ勝てる程甘くはなかったわけですが、それなら他人以上に努力して成長で抜き返せば誰も文句はないだろうと。
やっぱり人知れない努力があってこそ勝利のカタルシスは大きくなりますからね。
持ち前のセンスが花開いて、強豪揃いの中であかねが頭角を現していくのがとても楽しみです。
・女同士の感情
最初は百合漫画としての期待は持ってなかったので、スポーツ漫画として面白いなーと読み進めていたのですが、このシーンで一気に持っていかれましたね。
おおっ・・・これは・・・感情!!!
内に秘めた感情を発露する瞬間はいつだってワクワクするに決まっている。
しかもこれただ経験者がバドミントン舐めてる初心者にキレてるだけじゃないんですよ。
何でこんなに怒っているのかというと
佐羽子が汐里コーチに密かにお熱なんだけど、そのコーチがあかねを気に入ってるのが気に入らないという背景があるんですよ。
バックボーンのしっかりした太い感情をこんな見開きで見せられたらそりゃあ百合好きにはたまらないものがあるよね。
女の子の女の子への感情があるならこれはもう・・・百合だよなぁ?
あかねが強くなればなるほどコーチからの期待は強くなり、それに嫉妬した佐羽子からは疎まれる。 加えて佐羽子はラケットを握ると性格が変わる。
これは二人の試合を通じて感情の大爆発が見られるかもしれない。
バトル百合にしろスポーツ百合にしろ、戦いを通してお互いの感情をぶちまけるのが一番の醍醐味だからね。
佐羽子のコーチに対する思いは完全に百合ですが、個人的にはあかねに対する感情の方がこの先気になります。 これは見逃せない。
マネージャーのミカから選手時代に使っていたラケットをもらったあかねは彼女がこれを使い練習してきた過去を思い号泣する。
スポーツが好きなあかねだからこそ、選手が積み重ねてきた苦労や道具に対する思い入れがわかる。
才能がなく苦労した選手時代の自分の過去を重ねるミカに思わずウルッときました。
ほんとうは勝ちたかったんだろうなぁ。
初めて会ったときにレギュラーはムリときっぱり言ったのも、才能が及ばない辛さを知ってるからこそのアドバイスだったんだろうね。
願わくばこのままミカのラケットで強豪どもをブチ倒してほしい。
この二人の下剋上のストーリーとしてみても面白いよね。
というわけで『あかねのハネ』1巻でした。
連載雑誌であるヒバナが刊行終了してしまったので現在は裏サンデーで連載されています。
ちなみに2巻は7月12日発売。
めっちゃいいタイミング!!!!
この1巻の熱が冷めないまま2巻を読めるのは我ながら非常に贅沢な楽しみ方だなと思いました。
最後まで読んでいただきありがとうございました!
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