好きになったのが、“あなた”だっただけ。
もはや百合好きには説明不要な『安達としまむら』で知られる入間人間先生の百合小説『少女妄想中。』です。
表紙はこちらももはや説明不要な『やがて君になる』の仲谷鳰先生です。
説明不要と説明不要なタッグなのでつまり説明不要ってことですね!
感じてください。
以下感想(ネタバレあるので注意)
・ガールズ・オン・ザ・ラン
全速力で走ると目の前に走る女の子の幻覚が見えるお話。
発想が奇抜すぎて、これはSF?オカルト?ミステリー?ってなったけど、結局謎は謎のまま最後まで話が進んでいきました。
失念しておりました、これは百合小説だった。
中学生になっても高校生になっても大学生になっても社会人になっても、幻覚の女の子に会いたいがためにひたすら全速力ダッシュするアオが一途すぎてたまらなかった!
さすがに社会人になると時間的に縛られたり、体力の衰えでなかなか全速力になれなかったりで彼女と会える時間が減っちゃうんだけど、それでも会いたい一心で時間の許す限り必死に走り続けるアオのひたむきさがとにかく読んでいて眩しくてエモすぎた。
これはアニメ映画化して欲しいなと思った。
『君の名は』みたいな色彩豊かなキラキラした感じで。
ちょっと芹は報われなくて可哀想だったなー。
この話はアオ視点でしか書かれてなくて、肝心のアオが幻覚にしか興味がないものだから、全然芹に対する気持ちが書かれてないんだけど、そんな少ない芹の描写の中ですら芹がすごくアプローチかけてるのがわかるのが切ない。
これ芹視点でも一本余裕で書けただろうなー。
あと骨折した時の絶望感は読んでてすごかったw
でもその後再び走り出す時の息を飲むような疾走感は筆舌に尽くしがたいものがあった。
もう最後の一行までエモさと一緒に風のように読み抜けていったよね。
「あなたって、初対面・・・だよね?」
今日初めて会った女の子に十数年間ひたすら片思いをしていたというパラドックス的シチュエーション! 天才的だ!
・銀の手は消えない
夢の中の物語ということで全体的にふわふわしてつかみどころのない話でした。
なので自分もふわふわした感じで読んでました。
自分自身夢があまり好きじゃないんですよね。 どこがおかしいかと言われると答えられないけど違和感しか感じない雰囲気が嫌いで。
この話は夢の足のつかないような曖昧な雰囲気が上手に表現されすぎててちょっと苦手だったなぁ。
単に好みの問題です。
・君を見つめて
姪が伯母に恋してしまうという年の差百合で、ガールズ・オン・ザ・ランや銀の手は消えないとはまた雰囲気の違った、まるでゲロ甘な毒を舐めてるような破壊力特化百合でめちゃめちゃよく効きました。
タイプで言えばあだしまに近いと思います。
伯母がとにかくいいキャラしていて、寡黙かと思いきやひょうきんで、大人びていてかつ子供じみていて、そんな愛くるしい伯母の可愛さに姪が成すすべなく瞬殺されるんですよ。
しょうがないこれは、自然の摂理や。
伯母と姪を繋いでいるのが単なる気持ちでなく、かつて姪が伯母から奪ってしまった右目というのがグッドですね。
姪と伯母という切っても切れない繋がりと伯母の一生の多くを奪ってしまった責任というこれまた切れない重い繋がりがいいアクセントになってました。
本編の破壊力も高いですけど、後日談の今にも空と繋がる海でも特にすごくてうおいいいい!あなた達何やってるの!と悶絶モノでした。
あと、この伯母ってのが実はガールズ・オン・ザ・ランに出てきた芹じゃないかと思うんですよね。
過去の足の速い友達の話とかアイスの話とかちらほら繋がりらしきものが。 多分探せばもっと出てくると思います。
さらに言えば銀の手は消えないとこの2つの話も繋がっている気がしてなりません。
どのお話も他の物語との繋がりがちょこちょこ見えるんだよね。
ちゃんと読み込んで考察すればわかるんでしょうけど、何せ読解力が無いのと雰囲気だけでも十二分に満足したのでもういいです。
ほら、エヴァとか雰囲気だけで楽しむタイプなので・・・。
大好きな『安達としまむら』の作者の百合小説ということでかなり期待していましたが、それを上回る満足度で幸せです!
3つくらいの話のボリュームだといろんな話が読めてしかも読みごたえもある量なのでなかなかいいですね! 是非次が出ることにも期待したいところです!
最後まで読んでいただきありがとうございました!
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