時は百合姫KADOKAWAアンソロ戦争の真っ只中。
KADOKAWAが解禁した秘密兵器”人外百合”の一つ、人外×人間の百合アンソロジーです。
設定にかなりの振れ幅がある人外×人外と違い、こちらの人外×人間の方がアンソロとしてはまとまりがあるのではないのかなーと思います。
人外×人外の感想はこちら 人の枠を超えた百合を体感せよ!【バニラ Vanilla 人外×人外百合アンソロジー】
以下感想
・夜に鳴く鳥たち / 寝路
学校が長期休みに入り、大学生の梢はいつものように祖母の家を訪れていた。 ニホンオオカミに会いたいと山へ入った梢、そこで彼女が出会ったのは鵺と呼ばれる山の番人だった───。
人外百合メーカーとして商業でも同人でも人外百合を描いてきた寝路先生。 これまで人外×人間をいくつも産み出してきた先生がトップバッターとして描いたのはなんと鵺。
全身を覆う体毛、大きな体躯そして赤ふんどし。 見るからに人外!!とわかるコスプレ感のないキャラデザはさすがという他ない。 山でこんな生き物に出会ったら「合い見える」という表現をしたくなるのもわかる。
無骨、故に純真!!
永い時間を生きてきて滅多に動揺とかしなさそうな鵺が恋の顔をしてしまうギャップよ。 拙者、人間に押せ押せされる人外好き好き侍。
・うちの妹が腐女子になりまして / あさがお
腐女子の双子、梓と薫は恋人同士の関係だった。 ある日、外出した薫は事故によって本物の腐女子、すなわちゾンビになって帰ってきてしまった。
ドッペルゲンガーかなと思いきやまさかのゾンビ。
コミカルな雰囲気だったけど、姉が妹に迫られた時(捕食的な意味で)に二人の走馬灯が思い浮かぶシーンはちょっとグッときました。 生か死か、相手か自分かみたいな極限状況は現実的な百合ではあんまり起こらないシチュエーションだったので新鮮。
あとゾンビ百合でゾンビにつける犬用の口輪は心惹かれるよねという話。
・居候の魔王様 / 竹嶋えく
異世界転生し勇者としての役目を終え、現世に戻ってきた女子高生ユウ。 しかし、なんと転生先の魔王もこちらの世界についてきてしまった! しかも魔王はユウにゾッコン、毎日行われるスキンシップでユウの日常が帰ってくる日はまだまだ遠い。
魔王がいなくなってしまったのに、彼女が大好きだったコーラをたくさん買ってきてしまうシーン。 ユウは出てけ出てけ言いながらもしっかり魔王と同棲生活してるのがよくわかってニヤリとしてしまった。 何だかんだ魔王も生活の一部になっているもんなぁ。
そして元の世界では完全に力を失っているので魔王に一生マウント取れないのがとてもいいと思いました。
・恋鬼 / 竹宮ジン
普通の女子高生として普通の生活を送っていたみちる。 好きな親友に告白はできていないものの満ち足りた毎日を送っていた。 しかし、下校帰りに連れ去られたみちるは人喰い鬼に捕まれば死ぬというデスゲームに強制参加させられてしまう。
油断していた・・・。 全部イチャラブだと思っていた。
隙だらけだったのでオチが完全に鳩尾に入った。
でも人外ならではのバッドハッピーエンドというか。 いや、普通にハッピーエンドだった。 あの状況では最善の終わり方だったので落ち込むとかはなかった。
お互いの思いが通じ、心も体も重ね合い、この先もずっと一緒にいられるのならこれをハッピーエンドと言わずになんという。 本人たちが幸せならそれでいいのです。
・WILD BABY / 天乃咲哉
遺伝子操作によって生み出された獣人”シメール”が労働問題を解決した世界。 社会人のみことは殺処分されそうになっていたとある片目のシメールを保護し、ブリーダーの代わりに育てることになる。
見た目はとても可愛いけれど、人間の労働力として使うためだけに産み出されたという設定が少し重く効いてくる作品。 人外百合としても面白かったけどSF百合としても面白かったです。
最初はおねロリの構図だったのが、シメールは成長が早いという特徴によっておねがシメールに抜かされていくのはなかなか巧妙。
・花魁ルームシェア / せきはら
新しく都内のマンションへ引っ越ししてきた亮。 だがその部屋には既に花魁の地縛霊という住人がいたのだった───。
人外に定評のあるせきはら先生。 幽霊に花魁という予想外の要素だったけど、花魁の周りの景色に全く溶け込んでないところが幽霊という存在感を際立たせてて良かった!
というかこの花魁、恋愛的にめちゃくちゃ難易度高そうだけど大丈夫でしょうか。 今のところ嬢と使いくらいの関係性に見えるけど、ここから燃える恋をして成仏させるまでの過程が気になりすぎる。
・みずあそう / 告白
大好きな人から告白されたトモミ。 喜んで返事をしたいところだったが彼女にはそれを断らなくてはいけない”ある秘密”があった。
人外が自分の正体に思い悩むという人外百合だと王道のシチュエーション。 本当はあの娘の気持ちに応えたいのに応えられない悔しさ。 感情で変身が解けてしまうとなると一緒にいるのも結構マズくなってくるはず。
見た目は人間っぽいけど、毛づくろいをしたがったりと結構猫側の要素も残ってるから付き合った後は猫としての本性を出したりするのかな?
・同居人は人魚 / 嵩乃朔
崖っぷち漫画家の奈々子は自暴自棄になり海で足を滑らせ転落してしまう。 溺れた彼女の命を救ったのは一匹の人魚、そしてひょんなことから奈々子はその人魚と暮らすことになってしまう。
絵が強い。 情報が込み入っている。 タライに人魚が入ってるの面白すぎるでしょ。
地上のマンションで人魚にとっては滅茶苦茶生活しにくそうだけど、それすら感じさせないほどの執念にも似た愛が溢れ出ている。 さすがヨーロッパから日本まで泳いできただけの気概はある。
人魚は顔がいいから何言っても様になるんだけど、でもやっぱり場所が場所なのでどうしても違和感が出てて笑った。
というわけで『シナモンCinnamon 人外×人間百合アンソロジー』でした!
設定が多種多様すぎるんだけど何故かまとまりが出てしまうという不思議なアンソロ。 どの話も人外ならではの展開やシチュエーションに溢れていてとても面白かったです。
とりあえず人外アンソロのターンは終わりですが、この先さらに人外百合が増えることを祈って・・・! 今年は人外百合の年にしような!!
最後まで読んでいただきありがとうございました!
この記事が気に入ったらぽちっとお願いします!