自分とあの娘は違うのに【あの娘にキスと白百合を 9巻】

自分とあの娘は違うのに【あの娘にキスと白百合を 9巻】

缶乃先生の『あの娘にキスと白百合を』9巻です。

あの娘にキスと白百合を 9 (MFコミックス アライブシリーズ)

9巻発売に伴い、都内では缶乃先生のサイン会が開かれました。

都合で来られない方のためにも、余りがあれば電話による受付も行うとのこと。

尊敬している方に実際に会いに行ける機会なんてそうそうないので張り切って受付開始と同時に電話しましたが結果無事撃沈

グッ・・・!! グギギ・・・!!!! 都民とその他でオタ活の充実度が違い過ぎる・・・!! 圧倒的地域格差・・・!

いいんだ・・・自分が行けなかったことで代わりに誰かがサイン本を得られるなら・・・。

 

以下感想(ネタバレあり注意)

 

別れのシーンから始まった今回の物語。

終わってしまった一つの恋。 何をどこで間違えたのか。

回想は出会いのシーンへと遡ります。

 

 

桜田明日花 部活での怪我が原因で留年してしまった博多弁が特徴の三年生。

1年ズレているせいか周りと馴染もうとせず、一人で行動することが多い。

 

萩元美風 コスプレが趣味の三年生。

周りに合わせる性格で目立ちにくいがたまに押しが強い場面も。

 

趣味のコスプレがきっかけで出会った二人は一緒にいる機会が増えていき、やがて美風は明日花のことが好きになっていきます。

 

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明日花、わかりやすく美形なキャラですね。 いやこの漫画のキャラはみんな可愛いけどさ。

パッと見てすげー顔がいいな?と思ってしまった。

 

美風の告白によって付き合うことになった二人。

しかし、周りに溶け込むことを拒否する明日花とみんなで仲良くやっていきたい美風のすれ違いはしだいに大きくなっていき、明日花が遠方の専門学校への進学が決まったことをきっかけに二人の関係は終わってしまいます。

 

明日花が突き放すように冷たい態度をとる一方、美風は明日花への想いを断ち切れずにいました。

どうして上手くいかなかったのか考える日々。 明日花と同じことをしてみるも自分と彼女は違うと気づいた美風は最後に謝罪と別れの言葉を残し、立ち去るのでした。

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な~~~~~???? なんて冷たい態度を・・・。

と最初読んだときは思ったけど、何回か読むとなんで明日花がこんなに頑なに孤立しようとするのかわかってきた。

自分が自分であることを保つこと、つまり周りに流されず孤立することが明日花のアイデンティティ。

美風は孤高に生きる明日花に惹かれ、明日花もまんざらでもない感じで付き合い始めたけど、明日花が他人からの干渉によって変わることを拒否する限り自分から美風に歩み寄ることはできないので別れるしかなかった。

ちょっと孤高な自分に酔ってるのかなと思うところもあるけど、それ以上にやっと手に入れた孤立という新しい居場所を守るのに必死だったのかなと思う。

大学とかだと浪人生って案外普通に溶け込んでるけど、高校って年齢がそのまま学年を表す世界だから周りとの壁がすごそう。

どうせみんなから敬語でしょ? 常に浮くことの不安感はえげつないよなー多分。

 

そして白黒パート。

ついにテスト成績学年1位を達成し、黒沢さんを倒すという悲願の目標を達成した白峰さん。

完璧な自分となり、親にも物申して全てが丸く収まったかに見えましたが・・・?

打倒すべき敵であった黒沢さんを倒してしまったら黒沢さんとは一体どんな関係になるのか。 再び黒沢さんのことで頭を悩ませます。

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「・・・カワイイ」だって!! 白峰さんが黒沢さんのことカワイイだって!!(大声)

2ページに渡り描かれるキスシーンは一コマ一コマが強くて強くて。 もうなんか舐めるように読んでしまった。

あと全然関係ないけど、進入禁止の屋上に忍び込むというシチュエーションは王道中の王道だけど一々生徒会に許可取るあたりが白峰さんらしいと思った。

 

一方、白峰さんに負け、念願の普通の女の子になれると思っていた黒沢さんはイマイチその実感がわかない。 ですが・・・

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黒沢さんを普通の女の子に変えてくれたのはこれまで出会ってきたたくさんの女の子達でした。

クラスメート、先輩後輩、この学園のみんなが歩んできた道のり、そして白黒が歩んできた道のり。 これらは別々ではなく離れたり繋がったりしながら今の黒沢さんを作ってきたのでした。

『あの娘にキスと白百合を』が単なるオムニバスではなく、白黒という主役を用意した意味が全てこのシーンに詰まっている気がする。 これを描くために9巻まで続いてきたんじゃないかと思えるほど。

もう何というかね。 重いよ、感動が。

1~9巻の4年分のパワーで殴られたから。

この作品をずっと追いかけて、好きでよかったなと思えたよ。

 

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そして、わかる。 これまでの積み重ねを否定するつもりではないけど、昔の孤高の黒沢さんがかっこよかったというめんどくさい懐古厨の気持ちそれはそれでわかる

 

 

そして場面は明日花へ。

別れた直後の明日花は自分からフッたのにも関わらず、美風のことで頭がいっぱいです。

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好きですね、このシーン。

冷静に考えてるつもりでも美風(に似てる人)を見かけた瞬間、思わず体が動いてしまう。 その後の「会いたい」も失って初めてどれだけ美風が好きだったのかが伝わってきて切ない。

相手を自分に寄せようとした美風、自分から歩み寄ろうとしなかった明日花。 非はお互いにありますが、明日花は美風の謝罪の言葉すら跳ね除けてしまいました。

もう美風のことは忘れると決めた明日花でしたが・・・。

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う~ん、かっこいいなぁ~~。

卒業式で美風をさらうという行動力を見せつけてくれました。

 

今回は今までに比べると派手な設定とかは無かったかもしれないですが、その分丁寧に二人の関係性や心理をじっくり見れた気がします。 なんかとてもしっくりきたし、二人の最後にもじわじわとこみ上げるものがあった。

というか毎回思うけど、缶乃先生天才だな?

普通自分の恋愛観で精一杯だと思うのによくこんな無数の恋愛観、関係性を作り出せるものだなと感心してしまう。

作者が作った筋書きをキャラが演じてるという感じが全然しなくて、人格を持ったキャラクターが生きて動いているのかと思うほどキャラの想いがしっかりしてると思うんですよね。

スパコンかなんかでシミュレーションでもしてるのかな? 缶乃先生は同じ人だと思えないんだよな~~笑

どうやって話考えてるのかすごい気になるから、ネタ帳とか設定のラクガキとかめっちゃ見たい

 

というわけで『あの娘にキスと白百合を』9巻でした。

もう今回で最終巻か?と思うほど白黒が進展しましたね。 まだ終わりではないみたいですが、もう終わるなという寂しさを感じました。

あのキスが終わったら自分の中で時代が一つ終わる。 それくらい大きい存在。

なんだこの卒業式まであと3日みたいな雰囲気は~~~~!!!

 

最後まで読んでいただきありがとうございました!

 

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